エネルギー源の乏しい日本。
特に戦後の電気文明の発達で、エネルギー確保は最重要課題となった。
そこで様々な方法でエネルギーを確保するべく奔走したわけだが、その中で当初非常に期待され、推進されたのが、原子力である。
核被害国であるにも関わらず、原子力発電の導入を推進したのは、それが他のエネルギー資源と比べて、エネルギー変換率が高く、長期的に使え、補給間隔が大きいという意味で、エネルギー確保が安定していたからである。
もちろん、放射線を発生するという欠点もあるのだが、そのための様々な技術的補完方法は研究され、実際に搭載されてきた。
にもかかわらず、この事故の多さはなんだろうか。過去に何度も何度も重大事故が発生し、小規模の放射線漏れや緊急停止は毎年何件もの割合で発生している。
今度、東北電力と東京電力で、過去に臨界事故が発生しており、それを隠蔽していたと見られる事件が発覚した。当時の技術者の記録などから間違いないと見られている。
臨界とは核分裂が止まらなくなる現象だ。
今回発覚した事故は、中性子を吸収する制御棒が抜け落ちたために、炉心で中性子→核分裂→中性子の発生→核分裂という展開が止まらなくなったというのである。数時間に渡って核分裂が続いたと言われている。
核分裂は高熱を発する。その熱で水を沸騰させて水蒸気でタービンを回す。発電そのものの仕組みは単純だ。しかし、この高熱を発する部分が非常に危険であり、中性子の発生と、放射線の発生は人体に非常に有害である。制御できなくなったらとんでもないことになる。
そのために、フェイルセーフが何重にも設定された高度なシステムになっている。
だからコントロールが難しいのは当然と言っても(それはそれで問題だが)、ここまでしょっちゅう事故が起こるのはちょっと異常である。
要するに、人間の問題ではないのか。今回発覚した内容でも言えるが、組織の隠蔽体質は、前々から指摘されていた。組織がそうであると、自然、現場でもその影響が大きく出てくる。ちょっとした問題もごまかすようになるから、いずれ大きな事故に発展する。改良を検討しないから技術も進歩しない。
そもそも核分裂原子炉にも様々な種類があるのに、日本は特定のタイプしか研究しないし、実用化しない。まして、その他のエネルギー確保技術の研究については、政府も電力会社も、全く推進しようとしない。石油火力と核分裂だけにこだわっている。
なぜか。
過去に莫大な資金を投じ、精力を傾けて行った計画を、やめるにやめられないからである。方針転換をしようとすると、すぐに責任問題に発展する。企業のトップも、行政の関係者も、誰も責任を取りたくないから、いつまで経っても、同じことばかり繰り返すのだ。
今は、あらゆる業種で同様のことが起こっている。
一連の不祥事の原因を作った人々は、多くが、戦後日本を築いてきた団塊世代であり、その大量退職が始まっている。経済発展を成し遂げた功績とともに、こういう社会を生み出した責任もきちんと果たしてから、引退してもらいたいところである。

0