派遣労働法の見直しが論議されている。
登録制日雇い派遣の最大手だったグッドウィル(廃業決定)の違法な派遣と、賃金の搾取が問題となり、厚生労働省で、日雇い派遣が見直されることになったのだ。
派遣労働法が改正され、特定職以外の派遣労働が可能になってから、派遣労働市場は急拡大した。
一方、企業側も正社員を減らす一方で、業務の一部を派遣社員にさせるような業態が当たり前になり、いまや労働人口の3分の1を超える1400万人以上が契約社員や派遣社員と言った非正規雇用従事者となっている。一日単位から、長くても3ヶ月、一年程度の契約で雇われている人たちである(もちろん契約継続で長期就業している人は多い)。賃金も正社員の平均60%程度で、月20万円以下の人も相当数に上る。1400万人の大半が年収200万円未満だ。
そんな中、急に論議がはじまった日雇い派遣の禁止。
これに波紋が拡がっている。
現状で日雇い派遣の仕事をしている労働者にとっては、基本的に、日雇い労働廃止には賛成である。しかしそれは、企業が長期雇用をしてくれるという前提条件があっての話だ。雇用状況が変わらないまま、日雇い労働のみを廃止すれば、生活出来なくなる人が大勢出ることだろう。
派遣業や中小企業も困惑している。
たとえば引っ越し業者は、常に多人数を雇っているわけではなく、引っ越しの多い時期(春や夏休みなど)に日雇い派遣業者から大勢雇って対応する。
日雇いではないが、電化製品や電子機器などは、大体春や秋の季節ごとに製品を出すため、その開発工程に合わせて特定の時期に稼働試験を行うことが多い。そこに多くの人を短期間雇う。
また、その大量の製品を配送倉庫で仕分けするが、これもまた非常に短期で人を雇う。
ほかにも多くの業種で短期契約労働者が働いている。多くは中小企業が雇っている。それで社会のかなりの部分が成り立っている。無くすことが出来ない市場になっている。
グッドウィルのような労働者を食い物にする業者を調査し摘発するのは当然のことだが、安易に労働業態を禁止するだけでは、現実の巨大な労働市場に対応出来ない。むしろ地下に潜り、さらに不法な業者が増え、深刻な労働問題が増加する可能性もある。
現在の労働問題には、下層社会を見下すような部分がある。
日雇い労働者の苦境に同情するような報道などの一方で、彼らの自己責任を問い、正社員や役員の労働実態に対する批判は皆無だ。労働者の教育や事業への斡旋といったシステムを充実させる必要があるし、企業の安易な目先利益追求体制を変え、長期で人材を育成する企業へのコンサルタントも必要だ。
いっそのこと日雇い労働者を中期契約労働にし、正社員を全員同様の契約社員として、努力相応の給与を与えれば、機会の格差は減るかも知れない。もっともそれはそれで問題噴出だろうが。

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