稽古が終わり、帰り支度をしていると、熱心な人たちが受身の稽古をしている姿を見かける。投げている人は師範であったり、黒帯の人だったりする。
この寒い時期なのに息を弾ませ、汗を流し、必死になって受身の稽古をしている。ボーッと見ていたら小生が合気道を始めたばかりの頃を思い出した。
ある時、H師範から「合気道が上手くなりたかったら、受身ができるようにならなきゃダメ。」と言われた。
自分の受身の不甲斐なさを何となく感じていたから、そう言ってくださった師範に投げて頂くことにした。
息が上がり、足腰がヨレヨレになった頃、「ラスト10回」と声が掛かる。「エーあと10回!!」「もーだめだー」と思いつつフラフラと師範に近づくとコテンと投げられる。「ハイあと9回…」。フラフラ……コテン……、フラフラ……コテン……「ハイお疲れ」……。
「あーおわったー!」……畳に仰向けで転がったままお礼の言葉も出てこない。
こんなことを続けている内に、「今のは良かった。」とヨレヨレになってからの受身を師範に褒められるようになった。余分な力が体から抜けた時、本当の受身ができるのだということを師範は教えてくださったのである。
自慢げに書いているところを見るとさぞや受身が上達しただろうと誤解をされる方もおられるかと思うが、決してそうではない。今でも受けを取るときは緊張するし、怖いとも思う。
若輩者の私がこんなことを言うのもおこがましいが、合気道の技って、見ているだけでは絶対に分からない部分が沢山ある。投げられて初めて感じる一瞬の気、思わず誘われてしまう自分の気。投げられた時の感覚を覚え、誘われた気の感覚を忘れない。自分は受身が下手だからと投げられるのを怖がっていたらどんな技も覚えられないと言っても過言ではない。
白帯の方、暇そうな黒帯の人を見かけたら、是非自分の受身の稽古相手に指名して見てはいかがかな。

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