年度が変わってもう3カ月が過ぎた。
環境が変わった子ども達も、そろそろ自分のペ−スが出来てくる頃だろうか。中でも、小学生が中学生になるのはとても大きな変化だろう。そういう変化の中で、中学生になって滝野川少年部を退会した子がいる。彼女は自分を主張しないという点では、いわゆる目立たない子だった。ただ私から見ると目立たないという事でとても目立つ子だった。いつも気になる子どもだった。稽古が始まる前、ほとんどの子どもが追っかけっこをしている中で、後ろ手でぽつんと壁にもたれてその様子を眺めている子なので、道場に来たときの挨拶以外で彼女の声をほとんど聞いたことがなかった。それもこちらから声をかけて出させた声だ。そんな彼女に一度、用を頼んだ事がある。稽古が始まる前道場の電灯が消えたままの事があって、『一階の事務所まで行って、武道場の電気を点けてくださいって言ってきて』というと、な・な・なんと彼女は無言のまま首を横に振って逃げようとする。道着の袖をつかんで頼むから行ってきてと言うと、かたくなに振りほどこうとする。出来る用事を頼まれて引き受けないなどという、自分だけが、やるべき事の埒外に居ようとすることなど、到底許すわけには行かない!と思いながら、『誰かが言いに行かなければ稽古が出来ない。おまえならちゃんとできると思うから頼んでいる。行ってきてくれ』とこちらも負けるものかと、ただし冷静にねばってみた。結果としてちゃんと用を果たしてくれた。普通に出来る子なのだが、人と関わることが苦手なのだろう。もう何年か前のことだ。
そんな風に、それでも4年間も稽古に通った彼女が退会したのは、中学生になってバスケット部に入ったからだと言う。少年部の大人達はみな驚いた。しかもかなりの強豪校で、平日はおろか、土・日も厳しい練習をしているらしい。新しい居場所を、多分少しずつではあるだろうが、着々と創っているようだ。
見かけより本当はずっと強い子なんだろう。
スタ−トの季節らしい、うれしいニュ−スだ。
ガンバレ!自分らしく。

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