普段の稽古を見ていると、杖の型をかなり覚えたなという印象の子が居る。
以前この稽古日誌に登場したことのあるロンリ−だ。
このごろは稽古のはじまる前などはみんなと走り回っていて一見以前のロンリ−ボ−イとは違うが、ほかの子よりちょっとオ−バ−めのはしゃぎようは、ロンリ−の裏返しのように感じがしないでもない。
その子が杖の直接の指導をしている人から、審査を受けてみなさいと言われて、半ば押し出されるようにみんなの前に出た。
私も、ここで普段のように動いてだいぶできるようになっている事を自分で気づかせて自信につなげたかったし、まわりもそういう見方になってほしいと思っていた。
だが正面に礼のあと『はじめ!』と声を掛けると、彼は動かなくなってしまった。
最初の動きをど忘れしてしまったのか、なかなか動き出せないで居る。
『深呼吸して、落ち着け』と呼びかけて、仕切り直しをさせようと思ったが、しばらくすると目の辺りをこすっている。泣いているのだ。
そばまで行って『直突きからはじめよう』とヒントを出したが、こころの入れ物の容量を超えてしまったのかもしれない彼の緊張感はすぐには戻らない。
結局このときは、別の時にやり直そうという事になった。
こちらで用意したハ−ドルの高さは一つでも、どの子どもにも同じ高さとはかぎらない。
だが必ず越える事はできるので、今のところは彼の心のエネルギ−が溜まってくるまで待ちたいと思っている。

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