この本はタイトルに見る技術力をノウハウと見立て期待すると期待外れに終わる。
むしろ、永続的な開発志向を鼓舞し続けるための69項目の精神論(意識、考え方、心掛けの類)の書と見るべきであろう。
もちろんノウハウ的なものがないわけではないが、ホウレンソウの奨励やPDCAサイクルなどビジネス書の受け売りばかりで新鮮味はなく、底も浅い。
また、他の書籍からの引用や格言の多用、とりわけ川勝平太が好む五箇条の御誓文の重要性を説くなど総花的なつまみ食いに終始し、この本だけから彼の内なる本質(真に欲しているもの、社会と個人の関係についての洞察など)に迫ることは無理である。
つまり、彼が思うところの良い社会をどのようにして達成していくかというノウハウも一貫性のない陳列に終始している上に、肝心のより良い社会を彼がどのように定義しているのか(考えているのか)は全く見えてこないのである。ただし一方で彼の権力思考的な面はよく見て取れるのは興味深い。
とはいえ、その清濁併せ呑む芯のなさと博学故に、彼がどのような価値観の主人の下でも優秀な役人であること、おそらく川勝平太によく仕えるように、時代が時代ならナチスドイツにおいても有能な官吏として迎えられたであろうことは容易に想像できるのである。
以下に具体的にそう考える理由を示そう。