第25回 三国丸
確定申告も終わり、やっと新しい一年が迎えられる感じです。今年はどんな一年になるのか、期待と不安の入り混じりのスタートです。
今回は、三国丸(さんごくまる)を紹介したいと思います。

三国丸 船の科学館 所蔵

三国丸 富山県魚津市新川文化ホール 所蔵
厳冬期の日本海を航行する日本海エキスプレス
日本海の冬は、とても厳しい。波は荒々しく、地乗り航法の弁才船などが航行出来る環境条件ではない、しかし、北海道〜長崎まで、厳しい冬の日本海をノンストップで挑み続けた船があった、それが三国丸(さんごくまる)である。
三国丸(さんごくまる)の積み荷は、煎海鼠(いりなまこ/いりこ)・乾鮑(干鮑(ほしあわび))・鱶鰭(ふかひれ)の海産物(乾物)で、これらは俵に詰められたことから俵物と呼ばれ、これは当時の中国(清)に、今日と同様に中国料理の高級食材として輸出されました。

三国丸のスケッチ (ラペルーズ世界周遊記から)
法政大学出版局 ものと人間の文化史 76-U 和船Uから抜粋
どんな船か、判らなかった三国丸(さんごくまる)
この船は、元々、「長崎叢書」や「長崎雑記」という書物に書かれてたもので、1500石積みの俵物運搬専門の船で、゛外見は日本の船で、船底は唐船で、帆が蘭船の船゛ということだけで、詳細は判らなかったのだが、40年ぐらい前に「俵物廻船千五百石積仕様帳升代銀積り書」という資料が発見され、ある程度詳細な形が解り、その上に、たまたまだったのだが、18世紀のフランス国王ルイ16世の命により、太平洋探検に向かったフランス海軍士官ラペルーズの資料の中に上の図で示している三国丸のスケッチがあることが判り、かなりの詳細が判ることになった。

法政大学出版局 ものと人間の文化史 76-U 和船Uから抜粋
日本海の荒波を越えるための構造
三国丸(さんごくまる)という船の由来は、日本/中国(清)/西洋(オランダ)の三国の造船技術を利用したことを意味している。上の構造図で説明すると赤は中国の影響している部分で、青い部分は西洋の影響を受けていることを示してみました。
まずは青の部分ですが、これは西洋のガレオン船の影響を受けているみたいで和船の構造は「和船への誘い Vol.18」(
http://navy.ap.teacup.com/kanzo/30.html)を参照してくれれば判ると思いますが、航から根棚、中棚、上棚と下から板で繋ぎ上げていくのですが、本船は航から゛まつら゛という骨組みを前から後ろまで20本立ち並ばせ、まつらに添って、上から横に片舷で9本の棚板を張り合わせるという工法を使っている、しかし、西洋帆船と決定的に違うのは、゛まつら゛の内側に内張板はない。
そこで赤の部分の中国のジャンクの影響を受けてる部分が重要で、和船の構造は「和船への誘い Vol.18」(
http://navy.ap.teacup.com/kanzo/30.html)を参照してくれれば判ると思いますが、和船では、梁の部分になるのですが、これは゛関板゛で隔壁を作ることで強度を強くしているようで、この隔壁を作るというのは、中国のジャンク船に見られるもので、本船は前から後ろまで7枚の関板で隔壁が設けられている。そして、この7枚の隔壁を貫いて、゛緑で示した部分の関板通し貫でしっかり連結固定されている。また、「俵物廻船千五百石積仕様帳升代銀積り書」中に西洋船に使われるタールの表記も見受けられている。
ただし、このクラスの船としては。関板の数が、ジャンク船の半数しかないことやまつらが細い点からなど、ガレオン船やジャンク式ほどの強度があったかは、甚だ、疑問に残るが、それでも弁才船に比べれば、ある程度、強度はあったと思う。
田沼意次と共に・・・・。
本船は天明5年(1786)に就航させているが、3年後の天明8年(1788)能登沖を航行中に暴風にあって出羽国赤石浜に漂着して沈みました。本船の建造費は莫大な金が掛かりましたが、冬の日本海を航行出来ると考えれば、コスト的にも悪くない選択でした。しかし、後継船は建造されることはなく、在来船の安全な季節の運航で済むと考えたのか、わからないが、大黒屋光太夫の漂流や蘭学が盛んになる時期であり、外国との交易も考えた時期ともいえ、田沼意次の失脚の時期に失われた本船は、ロシアとの交易を考えたものの、蘭学者に対して゛蛮社の獄゛という厳しい弾圧を行った次期政権の松平定信の意向もあったのではないかと疑うことも出来るが、何も証拠らしい証拠も出ていない以上、推測にしかないが、あらゆる意味で和船史上、ユニークな船であることは確かだと思う。
参考文献
法政大学出版局 ものと人間の文化史 76-U
和船U
著者 石井 謙治
次回は4月中旬頃を考えてます。たびたび遅れぎみになりますが、頑張ってアップしますので、今後ともよろしくお願いします。
谷井 成章 m(_ _)m

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