訓練は順調です…と思う。トレーナーのDからも「とても、とってもうまくいっているし、Self Confidenceが上がってきている」と褒めてもらっているんですが、今までの状態、怯えて恐怖で攻撃的になってしまうところから、徐々に自信を持たせ、安心させ、そろそろ次の段階に入ってきています。
ところで。
前回Dは、隣の犬に向かってフェンス際で走っては吠え狂うWillを見て、
[It's absolutely ZERO Collie!] (
ぜーったいにコリーじゃない!)と言いました。どうやら100%シェルティだわね、と。あの吠え方、走り方、性質、どれをとっても絶対シェルティ。そうなると天性のものだから、直すのは難しいよ〜って。(self reinforcement behavior?)
一体誰がコリー/シェルティ・ミックスだなんて記録したのよ〜!と笑ってしまいましたが、そこでDが何気なく言った言葉が衝撃的でした。
「(シェルターに保護された)あのときは警戒していておとなしかったし、
なにしろあの姿だったから、ろくに触ることもできなかったしね。」
汚れと毛玉とがひどくて、丸刈リータになっていたのは知っていました。皮膚の状態が悪かった(in bad shape)ことも。これまたシェルタースタッフとのミスコミュニケーションだったようですが、私たちはそれを毛の状態から来る皮膚炎だろうと思いこんでいたんですが、今回Dに聞いたところ、体中がくまなく
傷だらけで、その治療のために丸刈りにされたらしいのです。そして骨と皮に痩せていた、と。身体を触れるようになるまで1ヶ月以上かかったのだそうです。我が家に来た後も、皮膚があちこちガサガサと荒れているように見えたのは傷の跡だった、それに触るとビクッとしたのも怯えだけではなく痛かったのかもしれない。
その傷が人間によって与えられたものなのか、他の動物に襲われたのかはわからないとのこと。でもとにかくWillは、シェルターで食べ物に不自由しなくなるまで、そんな目に遭っていたのでした。
知らなかった。
ちょうどWillが収容された頃は、Hopeの体調が悪くて、私たち、気持ちがボランティアには向いていませんでした。正確には、去年の秋頃から、Hopeがもしかしたら長くないのではと思い始めた頃から、シェルターにはほとんど行っていなかったんです。
スタッフは、私たちがボランティアメンバーだから、Willのことを知らないわけがないと思っちゃったのかも。でも知っているべきでした。"bad shape"だった、という言葉の意味を具体的に聞かなかったのがいけなかった。思い込みは誤解の元ですね。そして、Dは私たちが当然スタッフから聞いていると思っていたから「何故怯えた犬にそんな無茶を」と思ったんでしょうね。今思えば。だからあんなに悲しそうにしていたんだ。
怯えて当たり前。誰も信用できなくて当たり前。そんな犬に無理矢理近づいて、恐怖のあまり噛み犬にしてしまった。今やっと平穏を取り戻しつつあるWillが、心から安心できるようになるまでにはまだ時間がかかるのかもしれません。当然だ、と思えます。
で、Dのもとで正しいクリッカートレーニングを始めて早1ヶ月が経ちました。
今気付きましたが、「噛まれた」時、記事にしてない…いや、できなかったんですね。あまりにショックで(コメントには書いたけれど)怪我も実はかなりひどかったし。事件は9月28日のこと、ちょうど1ヶ月です。噛まれた傷跡はまだ少し痛むし、縫ってもらわなかったのでちょっと引き攣れて、盛り上がってしまいました。でも、これがあるからいつでも初心を忘れずにいられるんです。
あれ以来、いろいろなものをくぐって自信をつける練習や、呼ばれて来たら必ずご褒美がもらえる習慣、誰も怖いことはしないし、傷つけないとわからせるための各種ポジティブなコントロール、常に信頼関係の強化をしています。近頃、表情も明るくなってきたし、甘えるのも少しずつ上手になってきています。ゴロゴロ転がってお腹を見せるのもしょっちゅうです。これはとても良いサイン。
そして、近頃、ちょっと新しい問題が出てきています。
吠えがすごいんです。これもDに相談したところ、「飼い主には大変だと思うけれど、とりあえずそれでいい」と。というのは、Willのような自信をなくして怯えている犬は、Self Confidenceのトレーニングでだんだんに状態が良くなってくるとそこで本来の性質が見えてくるのだそうで、今Willは、
「ここにいても大丈夫でちか?」 「こいつら、信用できるでちか?」という状態を過ぎ、
「なんだか居心地がいいでち」さらに、
「もしかしてボクってかなりイケテルでちか?」と
勘違い中。
調子にノリオ君街道まっしぐら!なわけですが、これでやっと普通の(トラウマのない)
「問題犬」としてのスタートラインなんです。今Willは私たちをtestしているそうです。どうやら自分がリーダーじゃないらしいけど、
「もしかして、もしかするとイケルんじゃないでちか?」と、いろいろ自分の優位性を試してみているところ。だから外に向かって吠え狂うのも、自分の縄張り、あるいは「群れを守る」
大きなお世話なんだよ〜Will、わかってよ〜意識の現れなんです。
…って。Dの受け売りですが。晴れて「普通の問題犬?」に昇格しつつあるWillですが、今後もSelf Confidenceのトレーニングは続けながら、このアルファ症候群の方もコントロールしていかねばなりません。これが難しいの!吠えている間はひたすら無視、吠えるのを止めた瞬間を逃さず、クリッカーとご褒美でよーく印象づけていくのです。
が。
この「止めた瞬間」を捉えるのが難しくて、うっかりすると、次に吠えるための息を吸い込んだその瞬間に褒めてしまい、犬は「吠えて褒められた」と勘違い…なんてことがマンガのように起きるんです。Dがやってみせると、明らかに
「この人、ボクが吠えるの嫌なんでちね!」って
理解してるのがわかるだけに悔しい〜〜〜〜〜!もちろん、一度わかったくらいで止めやしません。犬だって、わかることとできることは違うんです。だからものすごーく根気よく続けていかないと効果がないんだって。だからこの警戒吠えを止めさせるのはすごく難しい訓練なのだそう。でも、続ける以前に「わからせる」ことがいまいちできていない現状では進歩するわけがないです。ああ、大変〜!
昨日なんか、地下室の被害を見に来た保険会社の人に、もう少しで襲いかかるんじゃないかというくらいのアウト・オブ・コントロールっぷりでした。やっぱり白人男性がダメっぽいなあ。。。気長に直していかないと。
実は、最初に本格的な訓練を…って覚悟をしなくちゃいけなかった時はすごく辛かった。Hopeやクッキーのように、人間同士みたいにつき合いたかったから。コントロールなんてしたくなかった。でも今になって、やはり犬には犬の考え方があるということ、それに合わせて正しくつきあってやった方が犬にとっても安心で幸せなのだということを私はとうとう理解しました。
たとえば、以前も少し書いたけど、「外出や帰宅のときに無視する」この方法がこんな効果を上げるとは本当にオドロキました。と、同時に今までの私の態度は可愛がっているつもりで犬たちに逆にストレスを与えていたことになります。最近、うちの犬たちは人間が出かけても、ドアや窓に向かって我を忘れて吠え続けるということが皆無です。娘達が出て行った後なんか、シーンとしています。
「あ、お母さん、でかけまちたね」ってくらいのもので。クッキーでさえ、以前は吠えていたのに。
やっぱり私たち彼らの「可愛いベイビー」だと思われていたんだわ…orz
ほぷちゃんならそれでもよかったんだけど〜〜〜〜〜
訓練は犬のためだけでなく、私のためでもあります。基本は人間の子育てと同じ。タイミングを逃さず、褒めながら正しい方向へガイドするのが親の役目。言うは易し…D様、子ども達の訓練もお願いいたします…って感じ。
…と、昨日ここまで書いて、「順調に進んでますよ」ってことを伝えたかったんですが、その夜、またやっちゃいました。Will君、ブーの手を。流血はしませんでしたが。そして、その後徹底的に無視したせいで、今度はまた私を見る目に不信感が…orz 3歩進んで2歩下がる〜♪ってとこでしょうか。焦らない焦らない。

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