『自己組織化マップの応用――多次元情報の2次元可視化――』
徳高 平蔵・藤村 喜久郎・岸田 悟(著)
1999年
海文堂出版
☆☆
門外漢なりに整理してみると、ニューラルネットによる学習を利用して形成された複数の概念カテゴリーを2次元空間上に配置するテクニックが自己組織化マップである。この自己組織化マップを用いれば、本書のサブタイトルにあるような「多次元情報の2次元可視化」が可能になる。そのいくつかの応用例が紹介されている。
著者らも「はじめに」で予め断っているように、自己組織化マップそのものについての解説にはほとんど紙数が割かれていないため、既に自己組織化マップや関連分野について充分に学んだ読者が応用を試みる際に読むべき本と言えるだろう。
全体を通して読んで受けた印象は、自己組織化マップの応用例を報告した学術論文をまとめた本、といったもの。想定されている読者は、関連分野の知識を有している研究者・技術者。文章のトーンも、大学の理工系の教科書といった趣で、門外漢には決して読みやすいとは言えないだろう。
付録として、フリーの自己組織化マップ作成プログラムであるSOM_PAK(UNIX系OS向け)のコンパイル方法から実際の操作方法、用意すべきデータまで具体的に記されており、実際に自前のデータを用いて自己組織化マップを応用してみたいという読者には大いに助けになるだろう。
私自身は、自己組織化マップについては全くの無知で、サブタイトルにある「多次元情報の2次元可視化」にひかれて本書を手にした。自己組織化マップの巡回セールスマン問題に対する適用について論じた章も面白く、また付録も心強いものだったが、もう少し内容的に厚みも欲しかった。私のような読者には、まず自己組織マップそのものを解説した本を一読することを強く勧めたい。

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