『初めてのプログラミング』
クリス パイン(著)
西山 伸(翻訳)
2006年
オライリー・ジャパン
☆☆☆
Chris Pine, 2005, "
Learn to Program", The Pragmatic Programmers, LLC.の翻訳。
本書は、初めてプログラミングを学ぶ初学者のためのプログラミング入門。日本生まれのスクリプト言語Rubyを用いて、そもそもプログラミングとは何か、というところから解説している。あくまでもプログラミング入門でありRuby入門ではないので、プログラミング経験者がRubyの言語仕様のリファレンスとして使うのには相応しい本ではないと思う。
内容的には、おなじみのHello, World!から始まる基礎的なものが大部分を占める。数値と文字列、変数、流れ制御、クラスとメソッド、配列とハッシュ、ファイルの読み書き、といったところ(ただし、実質的な最終章である第14章「ブロックと手続きオブジェクト」だけは少し高度で、全くの初学者には何のことだかさっぱりわからないだろうと思う)。各章末には練習問題が付されている。問題作成には力を入れたと著者自身書いており、面白い問題が多いので模範的なプログラム例が載っていればなお良かったと思う。
本書のもとになっているのは、インターネット上で公開されているプログラミング入門“
Learn to Program, by Chris Pine”というWEBサイト。それをやはり西山氏が日本語に翻訳した
「プログラミング入門 −Rubyを使って−」というWEBサイトもある。本の内容はWEB版の内容とほとんど同じだが(ただし、再帰の例とファイル操作に関してはかなり加筆されている)、記述はより丁寧に、翻訳された日本語の文章もより読みやすくなっていると思う。
著者はボランティアで、子供たちにプログラミングを教えているそうだ。その経験が本書の内容に活かされているのだろうと思う。日本人著者の書くプログラミング入門の多くがイラストを多用するのに対して、本書ではイラストは1ヵ所でしか用いられていない。代わりに著者は言葉をつくして、プログラミングにおいて何を考えるべきなのか、について語る。そういうわけで比較的文字は多いが、小難しい話をしているわけではないので、中高生でも楽しくプログラミングを学べると思う(ただし、欧米流のユーモア感覚に初めのうちは面喰うかもしれないが)。プログラミングを教えるとしたらどう教えたらよいのか、という点に関しても示唆に富む本だと思う。
本文170ページ程度。

0