『『心の授業』ガイドブック――自分づくりの心理学――』
三森 創(著)
2006年
北大路書房
☆☆☆
「マンガ『心の授業』」シリーズ3冊分の内容に相当する心理学の「本」。帯に「『マンガはちょっと……』そんなあなた、ぜひぜひ!」と書いてあった。
「マンガ『心の授業』」シリーズは、単なる面白オカシいマンガ本ではなく、心理学の出前授業の教材と位置づけられている。
1冊目では、精神分析の立場から自我の働きについて解説し、
2冊目では、怪しい心理ビジネスの危険性について述べていた。
3冊目では、「自分探し」ブームに釘を刺し、代わりに「自分作り」を勧めていた。本書では、マンガ3冊分の要点を言葉によって解説している。
著者には申し訳ないが、僕はむしろマンガ3冊を読む方を勧める。本書も悪い本だとは思わないのだが、マンガがもっていた「ふくらみ」が感じられないのだ。
逆説好きの僕としては、「親と教師は、親と教師である前に『ひとりの人間』として子供たちと向き合うべきなのだろうか。」「親と教師が『ひとりの人間として』向き合うべき相手は、親自身、教師自身ではないだろうか。」といったクダリが面白かった。教育心理学や発達心理学の本はどうなのか(読んだことがないので)知らないが、学術専門書としての心理学の本には通常このテの話は滅多に出てこないように思う。著者は、普通の心理学者と較べて、自我(あるいは、自我の働き)にとっての、他者とのコミュニケーションのもつ本質的重要性を重視しているタイプだと思う。その立場に立てば、子供のコミュニケーション相手としての親や教師の役割の重要性が自ずと見えてくる。教育論・子育て論にはあまり関心がなかったのだが、著者の学問的信念の上になされている指摘であったので、なるほどと思った。
本文125ページ程度。

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