『レヴォリューションNo.3』
金城 一紀 (著)
2008年
角川書店
☆
角川文庫の「か-30-2」。オリジナル版が2001年に講談社から、「新装決定版」が2005年に角川書店から刊行されている。今回読んだのは、「新装決定版」から更に加筆・訂正された角川文庫版。
新宿のオチコボレ男子高校に通うザ・ゾンビーズの活躍を描いた、「レヴォリューションNo.3」「ラン、ボーイズ、ラン」「異教徒たちの踊り」の3話からなる青春冒険活劇。正直、全然面白くなかった。女子大生へのストーカーを追い詰める「異教徒たちの踊り」は多少マシだったが…。
『
フライ,ダディ,フライ』(2003年 講談社単行本版 ゾンビーズシリーズの第2弾)、『
GO』(2007年 角川文庫版)、『
対話篇』(2008年 新潮文庫版)、そして、本作、と、金城一紀の本を続けて読んでみてわかったのは、その「坦々」とした調子がこの人の文章の特徴なんだろう、ということ。一文が坦々としているし、物語全体の構成の仕方も非常に坦々としている。しかし、彼のデビュー作である本作なんて非常に顕著だと思うのだけど、その坦々具合と青春冒険小説というジャンルがマッチしていないような気がする。話の内容は冒険なのに、読んでいて少しもワクワクしないのだ。これまでは著者の狙いがわからなくてそれを不思議に思っていたのだけど、要するに、彼の文章はハードボイルド調だ、ということなのかもしれない。そう思えば多少納得はいくが、それで小説を面白く感じるようになるわけではない。
(自己のアイデンティティの模索をテーマとしているという意味で)青春小説である『GO』は、これでもかと思い切り詰め込んだ想いの「過剰さ」が特徴で、それが上手い具合に小説の魅力となっているのだけど、それは坦々とした文章が、詰め込んだ想いが暴れだすのを抑える効果をもっていたせいなのかもしれない。『対話篇』は、テーマが「死と別れ」であること、また、長編ではないことが幸いして、坦々とした調子が内容と比較的マッチしていたと思う。ここから類推すると、ゾンビーズシリーズの第3弾である『SPEED』(2005年 角川書店)は僕にとっては詰まらなく、『対話篇』と似た雰囲気ではないかと思われる『映画篇』(2007年 集英社)は多少面白いかもしれない。ただ、正直、彼の本はしばらく読まないだろうと思う。
本文270ページ程度。

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