『基礎Visual Basic 2008』
羽山 博 (著)
2008年
インプレスジャパン
☆☆☆☆
Visual Basic 2008 Express Editionを用いる、初学者を対象としたプログラミング入門。表紙デザインや装丁、本の厚さから「難しそうな本」という印象をもっていたが、実際に読んでみると、初学者向けに言葉を尽くして解説している良書だとわかった。
これまでに他のプログラミング言語の経験がなく、初めて学ぶ読者を対象としている。Visual Basic 2008の基本的な操作法から話を始め、変数と演算、条件分岐、繰り返し、配列、プロシージャ、クラスとオブジェクト指向、ファイル入出力、最後は、データベースやWEBサービスを用いたプログラム、WPFアプリケーションにまで言及する。リファレンス的な本ではないにも関わらず、500ページを越える大著。
大雑把に読み飛ばすのではなく、一字一句をジックリ読んで、著者の思考の流れまで追体験するように読むべき本だと思う。そうやって読んでみると、プログラムを作る上でどんなことをどんな順序で考える必要があるのか、何に気をつけなければならないのか、等、いろいろ見えてくる。この本を読んでいて「何でこんな面倒なことを今ここで説明しているのだろう」と思う箇所があったとしたら(例えば、著者は「値型」の変数と「参照型」の変数の違いに関しては、わりと早くから何度も述べている)、そのときは読み飛ばしても構わないと思うが、必ずそこに印をつけておくべきだと思う。将来疑問に思う点が生じたときに、まさにそこに答えが書いてあるだろうと思うからだ。面倒な事柄を敢えてそこで説明しているのは、それが、ちゃんと理解せずに進んでしまうと後でわからなくなってしまうポイントだからなのだ。また、電球マークとともに示されるTipsも比較的気が利いているものが多いと思う。
解説が丁寧なだけでなく、著者はプログラマの暗黙知のようなものまで言語化することを目指している。その点、非常に良いと思うのだけど、本当にこの本が初めての独学者にとってはキツいかな、とも思う。各章のボリュームが結構あって、お腹イッパイになってしまうのではないかと思うのだ。各章で取り上げられているトピックの中には、当然、大事なこととそうでないことがあるのだけど、その区別のつかない初学者にとっては、情報に飲み込まれ溺れてしまう可能性がある。プログラミングに必要な知識の全体像がいつまで経っても見えてこず、逆に底なし沼のように感じてしまうかもしれない。場合によっては、この本の前にもっと簡単な薄い本を1冊経験しておいた方が良いかもしれないとも思う。
敢えて本書の難点を挙げるとすれば、初学者向けにしては各章の内容が濃過ぎること(1日1章進むのが限界だと思う)、掲載されているプログラム例のフォントの選択が悪くコードが読みにくいこと、完成してからでないとプログラムの保存を促す文言が出てこない(笑)こと、索引が貧弱なこと。そして何よりも、ドップリ浸って読むべき本なのに、プログラム例や解説の文章にときどき誤りがあり、本の通りにやっても本の通りにならないことがあること。ただ、それこそが本当の練習問題なのだと考えて、デバッグに挑戦するのも面白いかもしれない。類推を働かせれば何とかギリギリ対応できる範囲内だと思う。
Visual Studio 2008 Express Editionを収録したDVD-ROMが1枚付属する。
本文485ページ程度。

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