『イチからわかるLinuxでパソコンを復活させる本』
日経Linux(編)
2014年
日経BP社
☆☆
「日経BPパソコンベストムック」中の1冊。月刊誌『日経Linux』(日経BP社)の主に2014年に出た号の特集記事から、「(サポートの切れた)Windows XPマシンの復活!」に役立ちそうな記事を集めたムック。2013年にも同様のムックが刊行されているが…、おそらく内容に大差ないだろうと思う(『日経Linux』自体が超マンネリの雑誌なのだ!)。
内容的には、(XPマシンという古めのPCで使うのにオススメの)軽量ディストリビューションの紹介・インストール解説、ちょっとした設定変更指南、各種フリーソフト・ツールの紹介、トラブル解決Q&A、といったところ。ただし、本ムックが扱っているのはあくまでも「Linuxのインストール、初期設定、トラブル時の復旧」といったところまで。使っているうちに生じてくる「ああしたい、こうしたい」というLinux初心者の想いにまでは応えてくれず、「痒いところに手の届かない」内容となっている。付属DVD-ROMに収められた「特製レスキューLinux」も本ムックの売りの1つだが、必要となる前提知識をもたないWindowsユーザーにはどうしようもないだろう。Linuxに関する必要最低限の概念的な説明がないため、本ムックを必要とするような人には役に立たず、逆に本ムックを役立たせることができる程度に知識のある人ならそもそも本ムックを必要としない、という印象。
「XPマシンの復活!」というテーマに沿って過去記事が「再構成」されているワケではなく、単に関連する特集記事を「寄せ集め」ただけ、というお粗末な印象(一応、本ムック刊行のために最新の内容にアップデートはされているようだが…、これまた信じ難いほど多くの誤植がある)。解説がテーマごとにまとめられておらず、何度も何度も同じような話を繰り返す無駄も多い(最新版のISOイメージをダウンロードしてインストール用DVDやUSBメモリを作成、インストール後に「端末」からのコマンド入力で少々の設定変更、GUI上でインターネット接続の設定・変更ができたら好みのブラウザやオフィスソフトをダウンロードして…、等々。逆に言うと、特集記事が毎回同じような内容、ということ)。インストールするディストリビューションを決めたとしても、特定のディストリビューションに関する情報がムック中のあちこちに散らばっているため参照しづらい。本ムックで取り上げられている内容は決して高度なものではないだろうに、(もともとがLinuxユーザーを対象とした雑誌の記事であるため)Linuxに関する何の前提知識も持ち合わせていない「ただのWindowsユーザー」に親切な内容とはなっていない(まさにそういう読者こそ、本ムックの購買層だろうに…)。XPマシンにLinuxを入れて使おうというWindowsユーザーが今一番気にしているのはネットワーク・セキュリティのハズ。本ムックにセキュリティに関するまとまった記述がないのは理解に苦しむ。
また、デスクトップOSとしてのLinuxの魅力を手っ取り早く読者にアピールするためにはどうしてもUbuntu関連の話が多くなってしまうのだが、その辺りの構成にも「古いPCの復活」という本ムックのテーマから考えると矛盾を感じる。最新のUbuntuやFedoraはXPマシンには荷が重過ぎる。
以前、1年ほど『日経Linux』を購読していたことがあるのだが、この雑誌のマンネリ度は非常に高い(笑)。2か月周期で似たようなテーマの特集を繰り返している(そもそも月刊誌であること自体が無理なのだろうと思う)。そういう雑誌の特集を寄せ集めただけのムック、ということを僕自身は承知の上で買ったのでよいのだが…。
どうもここ数年、日経BP社のコンピュータ関連の本には、雑誌記事を使い回して(ムックや文庫本、等として)商品化することで少しでもコストを回収しようという狙いの見え見えな本が増えてきているように思う。もちろんそのこと自体は悪くはないのだが、そうして出来上がった本にはそうするに値しない本が多い、という皮肉な現実がある。これがLinux専門誌の出すムックなのかなぁ、というのが正直な感想である。
本文175ページ程度(他に、基本コマンドのお粗末リファレンスとして10ページ程度)。DVD-ROM1枚が付属する。
※ 出版社としては、『
これから始めるLinux』(日経BP社 2014年)も一緒に買ってくれ、ということなのかもしれない…。

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