『マンガでわかるJavaScript』
柳井 政和(漫画・文)
2010年
秀和システム
☆☆☆
プログラミングの「プ」の字も知らない完全なるプログラミング初心者を対象とした、(トホホなヘタウマ)漫画でわかるJavaScript入門。読んでいるうちに、「これでいいんじゃないか」という気になってきた(笑)。
高校の必修クラブで(何を行うのかもわからない)謎の「プロ部」に入ってしまった3人組を対象としたプログラミング講座(顧問の先生が(何故か)教えてくれる)。Windowsの「ペイント」で描いたんじゃないか(実際は「ComicStudio」で描いているようだが)っていうくらいのヘタウマ漫画が半分、文章による解説が半分。
4部構成の全24話(マンガ・解説をあわせて、各話平均12〜13ページほど)。前半では基礎的な概念(変数、演算子、等)や制御構造の書き方について学び、後半ではWebページを操作するための機能について学ぶ(jQueryも少しだけ)。読みながら実際にあれこれと手を動かしていけば、最後にはそれなりに遊べるようになる。JavaScriptも究めようとするとこれはこれでヤッカイな言語だとは思うが、もちろん本書ではそこまで踏み込まない。テキストエディタとブラウザさえ使えれば実行結果がすぐ目に見える形であらわれるし、プログラミングに興味のある10代の小中高生にいいんじゃないかと思う。
プログラミング言語の入門書というものは不思議なもので、入門書のクセに読者が既に他のプログラミング言語の経験を有していたりプログラミングに付随する様々な概念を(ボンヤリとでも)理解していることを前提としているものがほとんど。本当の未経験者を対象とした本は驚くほど少ない(まぁ、プログラミング言語入門というものは、「コンピュータで何ができるのか」を既に理解しており「コンピュータを使って実現したいこと」が明確になっている人が「言語仕様を確認するために読むもの」だから、仕方ないのだが。また、そういう人でないと、入門書を読むだけでプログラミングを身に付けることは難しい)。
本書も目次を見ると「変数」「文字列」「条件分岐」…と教科書的に項目が並んでおり、「先生」の立場から書かれていることがわかる。ただし、本書の良いところは、(特にプログラミングに興味があるというワケでもない)「生徒」の側の素朴な感覚が(少なくとも漫画には)活かされているところ。「文字『列』って何だ!?」「『偽』って何て読むの!?」「『0番目』って何番目!?」「『X』と『X+1』が等しいだって!?」というような、ひとたび知ってしまえば忘れてしまうような「初心者の疑問」を上手に掬い取ってくれている。解説は簡潔だが、意外と丁寧。「こんなんでいいのか…?」というマンガとは裏腹に解説には教科書的な記述が多いが、プログラミング完全初心者への配慮も感じられる。
著者自身「上級者の方には物足りないかもしれませんが」と書いているが、おそらく「初級者」にも物足りない(笑)。でも、失笑必至のヘタウマ漫画で笑いながら読み進んでいるうちに、「これでいいんじゃないか」という気になってきた(笑)。だって、高校の必修クラブなのだ。仕事で今すぐどうにかしなければならないというような、切羽詰まった状況ではないのだ。プログラミング言語を介したコンピュータとの対話を純粋に楽しめばいいのである(「教養としての語学」があり得るように、「教養としてプログラミング」というものを概念的に学ぶというのもアリだと思う)。むしろ、その方が(小学校の理科の授業が驚きに満ちていて本当に楽しかったように)プログラミングそのものを楽しめるのかもしれない。(たとえそれがエラーメッセージであったとしても)「おおっ、画面に何か出たっ!?」で楽しめるのは、学校のクラブ活動ならでは。仕事でそれやってたら怒られるもんね(笑)。
本書は、マンガの設定が「生徒が(自ら主体的・発見的に)学ぶ」というのではなく「先生が(一方的に)教える」というものであること、出てくるプログラム例が文法事項を確認するための面白みに欠けるものばかりで、最後まで面白いプログラム例が出てこないこと(「おまけ 実践編」でようやく出てくる)、そもそもプログラミングを学ぶ「目的」が曖昧であること(と言うか、「クラブ活動」なのだが(笑))、等の欠点はあるものの、一気に読んでしまって、プログラム例自体は自分であれこれと試してみるべき本。本書ですら最後まで読み通せない、と言う人は…、まず「JavaScriptで何をしたいのか」について考えてみるべきだろう。
ちなみに、本書は
著者が代表を務める会社のWebサイトに掲載されている
「マンガで分かる JavaScriptプログラミング講座(第2版)」を書籍化したもの。と言うことは…、無料で読める(笑)。ただし、書籍化にあたり漫画にも解説にも加筆・修正が施されているようだ(例えば、本書の「おまけ 実践編」はWeb上では公開されていない)。
同じ著者による同形式の『マンガでわかるJavaプログラミング』(秀和システム 2012年)、『マンガでわかるAndroidプログラミング(第2版)』(秀和システム 2013年)も刊行されている。
310ページ程度(他に、索引として6ページ)。

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