『無理しない練習【お試し版】』
加藤 諦三(著)
2015年
三笠書房
☆☆
「知的生きかた文庫 わたしの時間シリーズ」中の1冊。表紙には「『自分らしく』生きたほうが好かれる」とも。この「お試し版」は、前書きに当たる「はじめに」と(全6章のうちの)第3章の前半2節分とで構成されている。
要するに「自然体が一番」という話のようだ。自分の欠点だと思っているところは、実はそれほどの欠点ではなかったりする。欠点を隠そうと無理をすると、その人の良さが消えてしまう。「どうせ自分なんて」とヒガむと、他者とまともにコミュニケーションがとれなくなる。一生懸命やって逆に嫌われる。だから、「自然体が一番」なのだ。
お坊さんの講演のようだな、という印象(「お坊さんの講演」なんて聞いたことないが)。本書には、人間観察に秀でた著者の洞察に溢れた言葉が記されている。ただ、それらは論理的な構成で著されてはいないし、誤解を生じさせるような表現も多い。このテの本を手に取る読者なら突き離されたように感じるだろうもの言いも散見される。「はじめに」も「第3章」も同じ調子で、同じことを何度も何度も言葉を変えて繰り返し述べている本なのだろうと思う。
表紙の印象は優し(易し)そうだが、「癒し本」というワケでもない。著者の言わんとするところを理解するためには、著者の言葉をそのまま文字通りに受け取るのではなく、真剣に自分の言葉に読み代えていく必要があるだろう。

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