『四訂版 中高一貫教育をサポートする 体系数学2 代数編』
岡部 恒治(編)
2016年
数研出版
☆☆☆☆
中高一貫校向けに6年分の数学のカリキュラムを組み直した検定外教科書『体系数学』の、中学2・3年生用「代数(上)」。出版元は「チャート式」で有名な数研出版。サブタイトルは「数と式の世界をひろげる」。
ページを開いた瞬間にもの凄く懐かしい「教科書の匂い」がフッと漂った(笑)。ある種の接着剤やインク、紙の匂いなのか…。プルーストじゃないけど、僕の場合「匂い」が遠い昔の記憶を生々しく蘇らせることがある…。
「式と計算」「平方根」「2次方程式」「関数 y=ax
2」「確率と標本調査」の全5章構成。この『体系数学』の特長は、学習指導要領の内容に縛られずに、学習するトピックの関連性により章の内容や1冊の章構成、中高6年間で学ぶ数学の体系を再構成している点。本書の内容は学習指導要領で言うと中学3年に相当するものが中心となっているが、中学2年に相当するものや高校の数学T・数学Aに相当する内容も一部含まれている。
中学1〜2年生用の『
体系数学1(代数編)』の主な内容が「1次方程式・連立方程式」「1次関数とグラフ」だったのに対して、この『体系数学2(代数編)』の山場は「式の展開・因数分解」「平方根と2次方程式」といった辺りか。結局のところ、中学校数学の(代数の)一番の課題は「1次式・2次式の扱いを習得する」ということなのだろう。
実際に本文を読みながら全ての問題を解いてみたところ、個人的には『
体系数学1』よりも易しく感じた。やはり、中学校数学の難しさの一因は、算数と数学との間のギャップ、特に(内容面ではなく)「形式的な違い」にあるように思う。逆に言うと、中1〜中2レベルの文字式の扱いに慣れてしまえば、中3レベルだからといって特に苦労することはないのかもしれない。あるいは、中1レベルの「1次方程式」、中2レベルの「連立方程式」ではその応用問題として文章題が出題されるのに対して、中3レベルの「2次方程式」では文章題があまり出されないことも、僕が「易しい」と感じた理由かもしれない。方程式は解くより立てる方が難しいので…。
「場合の数」や「順列・組合せ」「確率」「標本調査」を扱った第5章は、(「力任せの計算力」ではなく)「考える力」がより求められ、他の章とやや毛色が異なる。僕自身がこの分野を苦手にしているせいかもしれないが、「確率」と「標本調査」の解説に関してはやや言葉足らずに感じた(中学校相当分の『体系数学1〜2』の4冊に関しては、参考書の「チャート式体系数学」シリーズが刊行されている)。
考えてみると、第4章で扱われている2次関数は「xの2乗に比例するy=ax
2』の形のもののみで、「y=ax
2+bx+c」の一般形は扱われていない。第5章の「母平均・母比率の推定」に関する解説も何か奥歯にものの挟まったような物言いに終始する。この辺りは高校1〜2年生向けの『体系数学3(数式・関数編)』と『体系数学3(論理・確率編)』で再度取り上げるのだろうが…、二度手間だなぁ、とも思う。
ちなみに、『体系数学』シリーズは、『体系数学1(中学1・2年生用』の『
代数編』と『幾何編』、『体系数学2(中学2・3年生用)』の『代数編』(本書)と『幾何編』、『体系数学3(高校1・2年生用)』の『数式・関数編』と『論理・確率編』、『体系数学4(高校2年生用)』(微積分の基礎と数列・ベクトル)、『体系数学5(高校3年生用)』(複素平面と微積分の応用)の計8冊で構成されている。『体系数学1〜2』の4冊が四訂版、『体系数学3〜5』は三訂版が最新となっている(2016年02月現在)。
全ての練習問題・確認問題・演習問題の解答を載せた「解答編」が35ページ弱の小冊子(学校では配布される前にあらかじめ抜き取られちゃうヤツ(笑))として付属する。解答の導出過程まで記されており、答え合わせの際に大変役に立った。
本文135ページ程度(他に、確認問題・演習問題の解答、索引、平方根表・乱数表として15ページ程度)。

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