『心房細動に悩むあなたへ(改訂版)』
山下 武志(著)
2016年
NHK出版
☆☆☆☆☆
NHK出版の「病気がわかる本」シリーズ中の1冊。2012年に刊行された同名の本の改訂版で、(本人または家族が)「シンボウサイドウ」と診断されたものの「それっていったい何?」というような読者に向けて、「心房細動に悩むあなたへ伝えたいこと」がまとめられている。著者の名前は全く知らなかったが、心房細動や不整脈関係の本をたくさん書いている医師のようだ。
4章構成。心房細動の概略、脳梗塞の予防(抗凝固薬)、心房細動そのものの治療(抗不整脈薬、カテーテルアブレーション)、といった内容。図表やイラストは多くなく文章主体の本だが、読者に直接語りかけるような易しい口語体で、1ページ当たりの字数もそれほど多くなく、ページ数そのものも少ないため気楽に読める。伝えようとしている内容が明確になるように全体が構成されており、本文110ページ程度の薄い小冊子だが説明不足に感じる点はほとんどなかった。黒とマゼンタの2色刷り印刷も目に優しいと思う。
先日、父が軽い(?)心不全になり入院することになったので、一読してみた(医師からの病状の説明の中で、心不全の原因の1つとして従来からの不整脈が挙げられていたので)。以前から父に不整脈があり、病院で「不整脈にも危険なものとそうでもないものがあり、お父さんの不整脈は後者」と説明されたことはあったが(おそらく前者は「心室細動」、父は「心房細動」なのだと思う)、不整脈や心臓病に関して僕自身はほぼ何も知らない状態で読んだ。本を読むのがかなり遅い僕でも5時間ほどで読み終えることが出来た。普通のスピードなら2〜3時間で読めるのかもしれない。ただし、このテの本に頻出する専門用語に関しては比較的馴染みがある方だとは思う(以前、心房細動とも関連がある生活習慣病関連の本を何冊か読んだことがあったので…)。
いたずらに不安を煽るでもなく、かと言って楽観視させるワケでもなく、といったスタンス。心房細動そのものについてと、最悪の合併症である脳梗塞の予防、心房細動そのものの治療について、伝えるべきことを少ない語数で簡潔に記している。1〜3ページ毎に「伝えたいこと」というまとめがあり、著者が読者に何を伝えようとしているのかわかりやすい(その68個の「伝えたいこと」が巻末にまとめられているので、先にザッと目を通しておくのもアリ)。「あとがき」に「患者さんやそのご家族に、ご自宅でリラックスしながら心房細動という病気のことを知ってもらうための“ツール”があるとよいかもしれないと思い、本書を書きました。」とあるが、狙い通りの本に仕上がっていると思う。心房細動について最初の1冊として本書を手に取ったのはラッキーだったと思う。
本文110ページ程度(他に「まとめ」として7ページ)。

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