『図解 はじめて学ぶ電気回路』
谷本 正幸(著)
2006年
ナツメ社
☆☆☆
一般向けに書かれた「電気回路」の入門書。大学等の教科書にも通じる内容を、独習者が読み通せるように平易に記述する、というコンセプトで執筆された本のようだ。表紙カバーには「驚くほど基本が身につく!」の文言も。
「電気回路」についての専門的な教科書を読んだことがない(目次を見たこともない!)ので比較対象がないのだが、広く浅く「一通り」が取り上げられているのではないかと思う(「おわりに」に、本書で取り上げられていない項目として「電気回路の過渡特性」と「二端子対回路」が挙げられている)。
簡潔にまとめられているが、やはり1度は学校で習ったことのある人の「復習」のための本、という印象で、全くの門外漢が本書を用いて独習・自習するのはキツいのではないか(ただし、数式の展開過程などなるべく省略せずに記述されているので、高校数学で習う、ベクトル、複素数、三角関数、微分・積分、等について習熟していれば、文系読者でもロジックを追うのは容易いだろうとは思う。もっとも、それは既に「文系読者」ではないのかもしれないが…(笑))。
本書のメインテーマはズバリ「回路を解く」こと。僕には「回路を解く」という時点で意味がわからなかったのだが(笑)、要するに回路中の任意の点における電圧・電流の値を求めること、のようだ。本書全体を通して強く感じたのが、正弦波交流の電圧・電流を複素数で表現してしまえば、回路のインピーダンスの計算や周波数特性の理解が非常に易しくなる、ということ。そのことを読者に感じさせる、という点に著者も力を入れているように感じた。
姉妹編として、同じ著者による『図解 はじめて学ぶ電子回路』が同時に刊行されている(本書と全く同じコンセプトで、トランジスタ・オペアンプを用いたアナログ・デジタル回路について簡潔に概説されている)。本書の後に続けて読むのが良いだろうと思う。
本文280ページ程度(他に、索引として5ページ)。

0