『ひっかかる日本語』
梶原 しげる(著)
2012年
新潮社
☆☆☆
新潮新書の「489」。日経BPネット・日経BizアカデミーBizCOLLEGEに連載中の「梶原しげるの『プロのしゃべりのテクニック』」に加筆・修正を加え、再構成した本。フリーアナウンサーの筆による「言葉」を巡る軽い読み物。
「ひっかかる日本語」というタイトル、「言葉のプロ」であるアナウンサーという著者の職業、また「うざい、しつこい、執念深い」(「まえがき」より)という自己紹介から考えて、世にハビコる誤った日本語表現をあげつらっては叩き斬っていくような(ある意味、説教臭い)本かなぁと思っていたら、やや違った(最初はそんな感じで始まるのだが…)。
同じ新潮新書から『口のきき方』(2003年)、『そんな言い方ないだろう』(2005年)というタイトルの本を出していることからもわかるように、著者の関心は、単に「正しい(あるいは、誤った)日本語表現」だけでなく、表現する前の心構えから、情報伝達の極意、話術や他者とのコミュニケーションの取り方、にまで及ぶ。そういった広い意味での「言語的コミュニケーション」に関する軽いエッセイ、といったところか(ところどころ、雑談めいた話もあるが(笑))。
全4章構成。全34ネタを大きく「ひっかかる日本語」「脱帽する日本語」「伝えるには知恵が要る」「印象は口と舌で変わる」というテーマ毎にまとめている。1ネタ5〜7ページと短く、前後の関連性もないため、通勤・通学の途中やちょっとした空き時間に細切れ的に読むのに適している(悪く言えば、緩やかに関連するネタを寄せ集めただけ)。目次を見て興味を惹くトピックを拾い読みしていくのでも良いだろう。後半なんかは、(「ビジネス英会話」ならぬ)「ビジネス会話」に役立つ話が多いので、意外とビジネスパーソン向きかもしれない。
著者はおかしなことにおかしいと言うだけでなく、誉めるべきところはちゃんと誉める。少々身構えて読み始めたのだけど、(ラジオ放送を聞き流すように)肩ひじ張らずに楽しめる本だった。ただ、『ひっかかる日本語』はあくまでも第1章の章タイトルであって、「正しい日本語表現」についての知識を得たい読者にとっては本書の内容では肩透かしに思うだろうし、逆にこのタイトルでは潜在的な読者を遠ざけてしまっているとも思う。「言葉」や「日本語」に特に興味のない人でもそれなりに面白く読める本だと思うので、悪い意味で「ひっかかるタイトル」である点が惜しいと思う。
本文225ページ程度。

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