『高脂血症』
菅原 正弘(著)
2002年
講談社
☆☆☆☆
「講談社健康ライブラリー」中の1冊。一般向けに書かれた「高脂血症(≒脂質異常症)」の本。サブタイトルは「手当てしないと心筋梗塞・脳梗塞になる」。
新書より一回り大きいサイズ。内容も「新書+α」といった印象。イラスト主体の本ではない。
全9章構成。生活習慣の変化と高脂血症の増加、検査値の見方、中性脂肪・コレステロール、原因・分類、検査法、動脈硬化、冠動脈疾患・脳血管疾患、運動療法・食事療法・薬物療法、その他、といった内容。第1〜2章は軽い読み物といった感じだが、第3章で少し印象が変わり、それなりに難しくなってくる。各章単独である程度完結させるためか、繰り返しも多い。体内での脂質代謝の仕組みがどのように阻害されてしまうのか、という話がメイン。文章の調子はやや硬めで、一気にと言うより数日かけてジックリ読んだ方が良さそうに思う。
医者の行う一般向け講演会のような内容とレベル。実際、著者は保健所等で一般向けのセミナー(「生活習慣病教室」「糖尿病教室」等)を担当しており、それがキッカケとなって本書を執筆することになったのだとか。どことなく主婦層を念頭においているように感じるのはそのためか(内容のレベルと言うより、題材の選び方などにそう感じる。)。読む前は「手当てしないと心筋梗塞・脳梗塞になる」というサブタイトルから危機感を煽るようなタイプの本かと思ったが、読んでみるとむしろ穏やかで誠実な印象。ただし、生活習慣改善のヒントに関しては、ややもの足りなく思う。
これは、この本を読んだ感想とはまたちょっと違うのだけど、生活習慣病関連の本を最近続けて読んでみて気づいたことは、「生活習慣病関連の本」を読む意味はあまりないのではないか、ということ。それと言うのも、もし生活習慣病が(遺伝的要因や生得的な要因、あるいは他の病気によって引き起こされた場合を除き)文字通り「悪い生活習慣」によって生じているのだとしたら、病気を治すには「その生活習慣を改める」しかないことは明らかだからだ。生活習慣は変えずに病気だけ治しましょう、なんてムシの良い「治療法」が書いてあるワケではないのだ。
そして、「良い生活習慣」とは、それこそ道徳の教科書(って、そんなもの見たことないけど)に出てきそうな「清く正しく美しい生活」なのだ。例えば、
- 夜更かしせず、睡眠時間を確保しましょう。
- 朝日を浴びて体内時計をリセットしましょう。
- ストレスを溜め込まないようにしましょう。
- 適度な有酸素運動を行いましょう。
- タバコはやめましょう。
- 食べ過ぎ、飲み過ぎに注意しましょう。
- 油脂、糖分、塩分の摂り過ぎに注意しましょう。
- 偏食せず、栄養バランスに気を付けましょう。
- 欠食、ドカ喰い、早喰い、ながら喰い、深夜食をやめましょう。
こういう生活を心がけないで病気だけ治す「特効薬」は存在しない。「秘密」なんて何もないのである。
まぁ、こういう当たり前のことに気づいた、ってことが、生活習慣病関連の本を続けて読んだことのメリットだったのかな。でも、「おばあちゃんの言うことを聞く」でも良いような気がするんだよな(笑)。
僕にとっては、第8章で、具体的な食事量等が記載されていたのが良かった。これはおばあちゃんも教えてくれなかったから(笑)。
本文210ページ程度(他に、索引として4ページ)。

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