2011/9/12  22:42

【読書感想】In the Belly of the Bloodhound - L.A.Meyer著(Bloody Jackシリーズ4巻)その5  読書&アート

ジャッキー「私たち3人で、権力と責任を分担するのよ。」
クラリッサ「権力ですって?30数人の、無力な女の子たちに対する権力?たいした権力だこと。」
ジャッキー「そうよ、彼女たちが私たちの部下で、私たちは彼女たちを統率するのよ。私たちに与えられた戦力は彼女たちだけだけど、もしかしたらあの娘たち、あなたを驚かせるかもしれないわよ。」

リセット「あなたはカシコイですね、ジャク-ウィー ファ-ベーア。とてもカシコイです。でも、あなたも知らないことあります。特に、私のトモダチのクラリッサのことは、あなた何も知らないですね。」


クラリッサは、奴隷制を推進維持している社会に属する、奴隷制に支えられた産業で得られた富で、贅沢に育てられている娘です。でも、彼女自身が「同罪」かというと、どうしてもそうは思えないのです。

クラリッサが学校に連れて来ていたアンジェリクは、クラリッサがまだ幼い頃、まわりに同年齢の女の子がいなかったので「遊び相手」として父親が買った子だった。子供のクラリッサとアンジェリクは立場の違いも意識せず、仲良く遊んで育った。

でもある日、ちょっとした子供らしいケンカをしているところを両親に見られた。母親は二人を居間につれてきて、アンジェリクをひざまずかせ、家族と使用人たちが監視する中で、クラリッサに彼女を殴るように命令した。二人は友達ではなく、主人と奴隷であることを、両方に分からせるために。クラリッサは彼女を、何度も平手で殴った。二人とも同じぐらい大泣きしながら。

クラリッサは学校では奴隷制を堂々と支持しているので、アボリッショニスト(奴隷制廃止主義者)のエイミーとジャッキーが頭に来て、彼女の名前で「奴隷解放協会」に寄付をして、それを新聞に載せるというイタズラをしたことがあった。それを読んだクラリッサの父親が血相変えて飛んできて...これは後で分かるのですが、アンジェリクを連れて帰ると言うので、クラリッサは必死で泣いて頼んでやめてもらった。

実は、クラリッサがその子を学校に連れてきたのは、年頃を迎えたアンジェリクを家に置いていると、「繁殖」の道具にされてしまうからだったのですな。クラリッサは今では彼女を友達扱いはせず、奴隷...というか召使いとして扱っているのですが、彼女が家畜のように子供を産むために見知らぬ男にレイプされるのは耐えられない...

アンジェリクを連れて帰らないでくれと、父親に必死で頼んだクラリッサを知ると、学校では女王様のように振舞っている彼女も、自分が否応なく属している社会の制度・権力の前には何の力もない17歳の小娘に過ぎないことがわかるのです。奴隷制に支えられた社会が邪悪なものだったとしても、そこを離れて生きる術は、彼女には、今のところ、ない。

それを考えると、奴隷船で爆発するクラリッサの怒りのパワーは、誘拐された時に急に沸いてきたものじゃなく、ひょっとしたら彼女がずっと表面下ぎりぎりに抱えて生きてきたものなのかもしれない、と感じたりする。

そして、社会制度に含まれる悪っていうのは何も奴隷制だけじゃない。ケイティの属していた西部開拓団は(個人的に直接にではなくても)先住民の虐殺に加担していたわけだし、ジャッキーが一時所属していた英国海軍は世界中で植民地を弾圧していたし。クラリッサの親友リセットだって、フランス革命政府から見れば「庶民を弾圧していた貴族階級」で、フランスに残っていれば親ともども殺されたかもしれない立場。

諦めて「自分のチーム」の男たちに従って「同罪」と言われるか。それとも、ケイティの母親のように、邪悪な世界が与えるものを一切拒否して、食べ物や水さえも拒んで死んでゆくか。力のない者には、どちらかの道しかないのだろうか...

でも、ジャッキーは英国海軍を離れ、自分の力で好きなように生きる道を選んでいる。(もちろん簡単ではないし、どちらへ行っても妨害されまくりですが。)ケイティは叔父を殴り倒して、ひとりで歩き出した。クラリッサも最後には、父親に逆らってでも、なんとかしてアンジェリクとその家族を解放しようと心に決める...

それを聞いたジャッキーが、それは良いことだとほめると、「私は、私がしたいと思うようにするだけよ!」と答えるクラリッサ。

結局、人間の罪も誇りも、どこの国/人種/階級に生まれついたってことで生じるわけじゃなく、自分の行動を選択することからしか生まれない、という当然の結論に達するわけですが。

自分たちはまったくの無力ではない、行動を自分で選択できるんだということを、女の子たちはジャッキーから学んでゆくのですが、最初から一環して好きなように振舞っているように見えるクラリッサも、もしかしたらジャッキーの影響を受けているのかな...本人はそんなこと、意地でも認めないでしょうけどね。



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