2005/4/7  21:45

サイドウェイ☆☆☆☆1/2  映画感想 〜2007年

「ワインを飲むとき、その葡萄が育った年のことを考えるのが好きなの。日光はどうだったか、雨は降ったのか…葡萄を育てて収穫した人たちのことを考えるの。古いワインなら、そのうちの何人かはもう死んでいるだろうとか。…ワインはたえず進化するから、今日ボトルを開ければ、他の日に開けたのとは違う味がする。だんだん育って、複雑さを加えて、ある時ピークを迎える−あなたの61年ものみたいに。その後は、ゆっくり、確実に、避けられない下り坂を降りてゆく−それがまた、めちゃくちゃ美味しいのよ。」

ワインを人生に喩えた(人生をワインに喩えた)言葉はよく聞きますが、これほど素敵なセリフは初めてだ。

小説を出版にこぎつけられず、仕方なく中学の英語教師をしている売れない作家(しかもネガティブ思考で、いい年して親のヘソクリを盗むようなヤツ)マイルズと、今はほぼCMの仕事が主な売れない俳優(しかも超浮気者)ジャック。一見、ダメダメ男だちですが、なぜか最初から好感をもってしまいました。私がダメ男好きなわけではなくて、彼らは本当は、根っからダメなわけじゃないからかもしれない。

たとえば、「おれは作家だ」「作家になる」とか言いながら一向に本を書き上げない人がいたら、それはダメ人間だと思うけど、マイルズはちゃんと書き上げてるし。内容が難解すぎて出版社がなかなか出してくれないだけで…本当は俳優のキャリアなんてとっくに諦めているくせに、他の仕事をマジメにやらない言い訳に「本業は俳優だから」とか言っていたら最低だけど、ジャックは本気で俳優業を諦めていないようだし。

でも、好感がもてたのは何よりも、この二人が本当に身近にいそうな人間としてしっかり描かれているからだと思う。これはマイルズとジャックの話なので、マヤとステファニーの女性陣には彼らほど力は入っていないけど、それでも「普通にそこらにいそうで、でも魅力的な女性」という難しいところをうまく描いています。

ガキ…いや、若さあふれる人々はともかく、この4人ぐらいの年齢になれば、現在のその人は過去のさまざまな経験から形作られているわけです。たぶん、それらの経験は映画になるほど面白くも感動的でもないし、そこから出来た人間も大したもんではないのかもしれないけど…それでもきっと「複雑さを加えている」。

ワインを飲んでも、葡萄を収穫した人々については知りようがないように、観客はこの4人について映画で描かれていない部分は分からないわけですが…でも、想像力を働かせれば深くなるような気がする、味のある映画でした。



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