2006/2/16  22:13

クラッシュ ☆☆☆☆  映画感想 〜2007年

社会派ドラマかと思っていたけど、社会派というより人間ドラマでした。(「ミュンヘン」もそうかと思って観に行ったのだけど、あれはバリバリ社会派だった…いや、正確には「国際政治派」?)

もちろんこの映画は、人種問題をメインテーマとしているのですが。でも、これを観て思ったのは、LAのような所に住んでいれば、人種の問題というのは、生きている限り避けられない、まあ「生活の一部」みたいなものなんじゃないかと。その意味では、病気とか交通事故とか、男女間や家族間のゴタゴタと似たようなものなのかもしれない。誰が正しいとか、どうすれば避けられるとか解決するとか、絶対的な答えはなくて…

でも、お互い人間なんだから、分かり合える道はあるはず。

…と、私なんぞがこう書くと、自分でもすごくウソ臭く聞こえるのですが…
この映画は、特にそれに類したセリフがあるわけじゃなく、丁寧に織り上げられた物語を通じて自然とそう思えるようになっている。(むしろ「人情ドラマ」かな?)

私はもともと群像ドラマが好物です。同じLAを舞台にした群像劇では、ローレンス・カスダンの「わが街」も、ロバート・アルトマンの「ショート・カッツ」も大好き。でも、アルトマンの群像劇の場合、大人数のドラマをさばく達人技を見せつけている感じもある。(いやもちろん、達人の技に見惚れるのも、映画の最高の楽しみのひとつですが。)

でもこの映画の場合、そういうのじゃなくて…本当に群像劇でなければ語れないことを語っているという感じ。登場人物は人種も職業も様々だけど、検事も警官も普通の市民も犯罪者も、全員が公平に、卑小なしょーもない人間として描かれているからこそ、各自に思いがけないepiphanyが訪れる瞬間が、なんとも説得力があり、感動的でした。

(こういう風に、英単語を挟み込むのは気取ってる感じでいやなのですが…日本語にならないepiphanyという言葉が本当にぴったりなのです。英和辞典では「ひらめき」と訳されているけど、ちょっと違う気がする。epiphanyはinspirationと同様に、「それを気づかせる神の存在」を意識した言葉だから。…あ、こういう事を言うと余計に嫌がられるかな…)

刑事役のドン・チードルのセリフに、「本物の街では、人ごみで肩が触れたり、ぶつかったりするけど、LAでは(車に乗っているから)人と触れ合うことがない。人にぶつかる(クラッシュ)ことが懐かしい」というのがありました。

人ごみで他人にぶつかるのは不愉快なことだけど、ひとつの「ふれあい」でもあるわけなのね。…そういえば日本(仏教文化)には、「袖振り合うも他生の縁」という、素敵な言葉があったっけ。

【蛇足】
以上に書いたようなメインテーマとは関係なく、感じたこと:
*相手を信用するかどうかに関係なく、まず「人の話はちゃんと聞け」ってことですね。
*なにじんでもいいけど、やっぱり英語は喋れた方がいいみたい。(当たり前か…)
*昨年はひそかに「ポール・ジアマッティ・イヤー」だった私ですが、今年は「ドン・チードル・イヤー」になったりして…





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