2009/7/19  21:08

中立(先週のThe Colbert Report)  スティーブン・コルベア

あまりにも正しい言葉を聞いたとき、頭が一瞬からっぽになったみたいにぼーっとしてしまうことってありませんか。あまりにぴったりとハマった指摘に、ほとんど生理的な快感を感じるというか。

私の場合、今週の「The Colbert Report」の、オバマ大統領によりアメリカ最高裁判事に指名されて、現在、指名承認公聴会が行われているソニア・ソトマイヨール判事に関する「The Word」(今日の言葉)がそれでした。

The Colbert ReportMon - Thurs 11:30pm / 10:30c
The Word - Neutral Man's Burden
www.colbertnation.com
Colbert Report Full EpisodesPolitical HumorJeff Goldblum


The Colbert Report 2009/7/16

ソトマイヨールさんは、指名承認されれば(まあ、議会は民主党多数なのでまず間違いなく承認されるのですが)史上初のヒスパニックの最高裁判事、女性としても220年の歴史でたった3人目となります。

オバマ大統領の指名ということで、共和党としてはなんとか反対したいところですが、ソトマイヨールさんにはこれといった突っ込みどころはないようです。しかし、ソトマイヨールさんの「経験豊かな賢いラテン系女性は、経験のない白人男性より正しい判断を下せる」という発言を「人種差別的」「白人に対する逆差別」と批判する向きもあるようです。

ここでは、公聴会でソトマイヨールさんの「自分の人生経験は判断を下す役に立っている」という発言に対して、共和党の議員が「それは中立性を損なうのではないか」と批判しているところをとりあげています。

スティーブン・コルベア:国民よ、私は自分が状況にどうアプローチするかということに、自分の人生経験を影響させたりはしない。たとえば、熱いストーブに触ったらヤケドするかどうか、前もって決めつけたりはしない。次の時は何が起こるかわからないだろう?(火傷のあとがある手を見せる)しかし、最高裁判事候補のソニア・ソトマイヨールの信念は違うようだ。

【ソトマイヨール公聴会のビデオ】
ソトマイヨール判事:私の信念をごくシンプルに言えば、私の人生経験が、議論をよく聴いて理解するプロセスに役だっています...

コルベア:悪いけど、あなたの言っていることは理解できない。よく聴いてなかったからね。明らかに、人生経験に対する彼女の意見を、最高裁に受け入れるわけにいかない。中立公平な上院議員たちが言っているように...

【公聴会のビデオ】
共和党の上院議員たち:中立性がない...中立で公平な判断ということと矛盾するのでは?試合のアンパイアが中立でないようなものです...

コルベア:ソトマイヨールの明らかな「私が学んだこと」バイアスによって、最高裁の中立性が脅かされている!そこで、「今日の言葉」は...「中立な男たちの義務」。

過去220年間、最高裁判事の圧倒的多数は中立だった。たとえば、サミュエル・アリートのように。

【サミュエル・アリート判事の指名承認公聴会】
アリート判事:差別に関する裁判を扱う時、私は自分の家族で、民族的バックグラウンドや宗教や性別による差別に苦しんだ人のことを思い出さずにいられません。私はそれを考慮に入れます。

コルベア:そう、彼は自分の人生経験を考慮に入れている。しかし、彼はそれを「中立に」やっている。では、なぜ彼は中立で、ソトマイヨールは中立ではないのか?

(彼はスカリア判事に「中立化(去勢)」されたから。)

それはアリートが白人だからだ。

(スティーブンの「エッセンス賞」受賞の可能性はこれで消えたね)

アメリカでは、白人が「中立」なのだ。

(実際そうでしょ)

長年にわたって、バンドエイドは色が一種類しかなかった。白人の色だ。それが標準の「人間の」色だ。

(情報源:Bureau of Whites and Measures(※1))

実際、それはあまりに標準的なので、私が子供のころには、クレヨンには「肌色」という色があった。ほとんどのアメリカ人は、考えることもなく、これ(自分の手の甲を指す)を「中立」だと思っている。

(フィッシュスティックを魚だと思っているように。)

つまり、白人の判事が下す判決は彼らの経験に影響されていない。なぜなら、彼らの人生経験は「中立」であるからだ。それに基づいた判断は「中立」なのだ。

(有名な判例:卵色対ベージュ色)

たとえば、ドレッド・スコット判決を見てみよう。この裁判の判事の人生経験が南北戦争前のアメリカの白人男性としてのもので、何人かは自分の奴隷を所有していたということが、「黒人は所有物である」という判決に影響していたはずはない。

(判事のローブの色は白だった。(※2))

それに、1942年の、「日系アメリカ人を強制収容するのは合法」という判決には、全員が「中立」であった判事たちの個人的背景は影響していなかった。もしアジア系の判事がいたら、その人生経験がこの中立性をいかに損なっていたか想像してみたまえ!

(ドウモ、アリガト、ロボト判事)

アジアではアジア人が「中立」なのだろう。アフリカではアフリカ人が「中立」だ。ヒスパニックは...「ヒスパニカ」で中立なのだろう。しかし、アメリカではそうは行かない。

(ヒスパニックは来て働いてるけど)

もちろん、ソトマイヨールの生い立ちが感動的でないと言っているわけではない。みんなが、彼女の生い立ちは感動的だと言っている。

しかし、この感動的な、貧しい生まれから努力してきた尊敬すべき人生経験が、彼女の下す判決に影響するとしたら、彼女は国を滅ぼすことになるのだ!

(高糖度コーンシロップ(※3)が先に滅ぼさなければの話だけど。)

しかし、どちらにしても、彼女はおそらく承認されるだろう。だから、せめて出来ることは、彼女の個人的背景を中立化することだ。バンドエイドが、マイノリティに売り込むためにしたことのように。南部貧民救済法施行機関によれば、「さまざまな肌の色に合わせたバンドエイドを発売してほしいという声にこたえて、同社は透明なバンドエイドを発売した。」

つまり、白人用バンドエイドに加えて、今度は「見えない」バンドエイドができた。問題は解決した。

(少なくとも、バンドエイドで応急処置はした。)

最高裁も同じだ。あなたがサム・アリートのような白人男性なら、当然、人生で起こるあらゆることは、あなたを完全に中立で客観的な人間に育てる。

(大学時代は偏向に興味があったようだが。(※4))

しかし、あなたがソニア・ソトマイヨールなら...人生で起きたあらゆることは、「透明」にしなければならない。

以上、「今日の言葉」でした。


もちろんこれは、主に「アメリカの人種差別」の話なんですけど、他のことでも...

1981年に女性初のアメリカ最高裁判事になったサンドラ・デイ・オコーナー判事は、公聴会で「女性であることはあなたの下す判決にどう影響しますか」と聞かれて、「男性であることはどう影響しますか?」と答えたそうです。

逆に日本なんていまだに、いろんな仕事に女性をつける時に「女性の視点を入れる」だの「女性ならではの感性に期待」だの言わなければならないみたいだし。

つまり、女性やマイノリティの側だけが、女性・マイノリティであることが特別のメリットになる、あるいはデメリットならないということをいつも証明しなければならないというのは、男性で(アメリカの場合)白人であることが「中立で標準」だと無意識のうちに考えているからなんじゃないかと。

こういう風に、徹底して皮肉に、でも鮮やかに切り取ってみせるあたり...やっぱりスティーブン(とその脚本家たち)はすごいです。

※1 International Bureau of Weights and Measures (国際度量衡局)のもじり

※2 KKKのローブのこと。

※3 High Fructose Corn Syrup 安価なジャンクフードに多く含まれ、アメリカ人の肥満の原因になっていると言われている

※4 アリート判事には、大学時代に人種差別的なクラブに所属していたという疑惑があった。



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