2009/10/17  22:08

オーブリー&マチュリン「21」(その12)  パトリック・オブライアン

最初に...前回、ソフィーからの手紙が何を言っているのかよくわからないのに、「ソフィーの書き方がわかりにくいから」とは言わないで、「自分がボーっとしているから」と、こんなところでもソフィーを庇っているジャックは、かわいいです。

で、クリスティーンからのもっと順を追った具体的な経過観察を読んだスティーブンの解説によれば...

スティーブンが航海に出てから、娘のブリジッドちゃんはずっと(誰より懐いているパディーンとともに)ウールハンプトンの「ウールコム・ハウス」(ジャックの屋敷)に住んでいるのですが、今ではそこにクリスティーンも滞在しています。ジャックの息子のジョージ君はすでに艦に乗っているのですが(まだ正式な士官候補生ではなく「志願者」という形だと思う)、艦が修理中のため休暇中で家にいました。その間、姉のシャーロットとファニー(双子)は、アイルランドにあるソフィーの妹が経営する寄宿学校に行っていて、家にはいませんでした。

ブリジッドちゃんには「頭が良くて有能な」ミス・ウエストという家庭教師がついていて、勉強しているようです。まだ学校へ行く年ではないので。あるいはずっと行かないかも。この時代の女の子は必ず学校へ行くとは限らなくて、ずっと家庭教師にみてもらう場合もありますからね。オーブリー家の双子の場合は、たまたまソフィーの妹が学校をやっているので行っているようなもので。

ジョージくんはもう艦に乗っているので、教育は英国海軍から受けることになるのですが、休暇中はブリジッドちゃんと一緒にミス・ウエストに算数を教わったりしているようです。そのお礼(?)としてミス・ウエストとブリジッドちゃんに艦で教わったロープの結び方を教えてあげたりしているようで。かわいい。

ところが、そうこうしているうちに、双子が予告なしで、予定より早く学校から帰って来ました。豪雨の中、長時間狭い郵便馬車に揺られて、ろくに食事も取れずに疲労困憊で帰ってきた双子は、ブリジッドが母親のそばの自分たちの席に、きれいな服を着ていかにも愛情を注がれている様子で座っているのを見て激怒。「あんた、まだいたの!なんでいつもいるのよ!」と口々に叫び、ブリジッドちゃんを椅子から突き飛ばそうとした...ところをジョージが勇敢に守った...ということのようです。

以来、双子はブリジッドちゃんに対して嫉妬の炎を燃やし続け、弟のジョージまでもがブリジッドの味方になっていることに腹を立て、ソフィーは板挟みで、立場上なりゆき上ブリジッドちゃんの親代わりになっているクリスティーンは双子の態度に腹を立て、ソフィーとクリスティーンの仲もなんとなく険悪になりかけ、すっかりストレスのたまったソフィーは双子の休暇の終わる日を指折り数えて待ち望んでいる、という次第。

しかし、ここで疑問に思ったのですが...オブライアンさんって、この子供たちの年齢を、それぞれいくつのつもりで書いているんでしょうかね??このシリーズは、例の「長い1813年」があるせいで、時間経過のつじつまを合わせることはとっくに放棄しているんですが...それにしたって、ジョージが艦に乗っているということは、少なくとも9〜10歳ぐらいにはなっていますよね。双子はそれより2〜3歳上ではなかった?12〜13歳にはなっているはずだと思うのですが。ブリジッドちゃんはずっと後に生まれているから、せいぜい6〜7歳ってところだと思うのですが...

「高慢と偏見」に登場する妹たちのイメージで言えば、当時の13歳前後といえば、そろそろ将来の結婚相手のことを考えたり、男の子に興味を持ちだすような年齢ではないかと思っていたので、母親のことでずっと小さい女の子に嫉妬するというのは、年齢にしてはあまりに幼い感じで、ちょっと戸惑ってしまったのです。

うーん、でも、そういうことはまた別なのかな。特にオーブリー家は父親がほとんど家にいないから、母親への依存が強くなっていて、その母親と離れて暮らしている間に、家に別の子供が入り込んでいたとなったら...ちょっと、ショックで「子供返り」しているのかもしれない。

とにかく、このあたりは、オブライアンさんが露骨にブリジッドちゃんの方を贔屓しているのが感じられて、双子はなんだか「シンデレラのお姉さんたち」みたいな書かれ方で、私としてはちょっとシャーロットとファニーに同情気味になったのでした(笑)。


2009/10/12  21:18

オーブリー&マチュリン「21」(その11)  パトリック・オブライアン

"squadron"と"fleet"は、日本語では両方「艦隊」と訳されているのでややこしいのですが、正確にはsquadronは「小艦隊」、大規模なfleetを構成する組織単位です。ジャックの率いることになる「青色艦隊」はBlue Squadron、南アフリカ艦隊(South African Fleet)を構成する小艦隊のひとつです。つまり、fleet全体の指揮官がいて、その人がジャックの上官になるわけ。

南アフリカ艦隊の司令官はレイトン提督。ジャックはサフォーク号に正式に着任した後、さっそく提督の旗艦に挨拶に行きます。

提督は、今までの航海では寄港する港がことごとく非友好的だったので、艦隊が(サプライズ号と同じく)補給に非常に苦労して、現在の艦隊は食料をはじめとする物資が何もかも足りなくなっている、と語り、いきなり思い切り不機嫌そうです。ジャックは、教皇特使サムのとりなしで当地の政府と友好関係が結べたおかげでブエノスアイレスでの補給はまったく心配ないことを話すと、そのことは一応喜ぶのですが、不機嫌が直った様子はなく。どうも恒常的にイライラしているタイプのようで、艦隊司令官ってみんなこうなんでしょうかね。過大なストレスのせいだろうか。とにかく、あまりジャックとはウマが合いそうにないタイプです。

ジャックが正式に英国海軍の少将(rear-admiral)として着任したと同時に、サプライズ号は「英国海軍雇用艦」としての身分を失ってただの一民間船となり、これから英国に里帰りすることになっています。サフォーク号が黄熱病で多くの乗員を失って人手不足なので、ジャックはサプライズ号から数十名のシップメイトを連れて行くことにして、志願者を募ることにします。

水兵たちにすれば、ここでサフォーク号に移ればこのままアフリカに行くことになるので里帰りのチャンスを逃してしまいますが、その代わり職にあぶれる心配はなく、このままジャックのもとで、大勢の馴染みの仲間と共に働ける。サプライズに残れば英国に帰って家族の顔を見られるけれど、その後の生活の保障はない、なかなか難しい決断ですが、ほとんどの水兵たちはもう心を決めているようです。

さて、サフォーク号が英国からの郵便を運んできてくれたので、ジャックのもとにはソフィーの手紙、スティーブンのもとにはウールコムに滞在しているクリスティーンの手紙がたくさん届いています。ソフィーの手紙によれば、ウールコムは有能な管理人により順調に運営されていて、子供たちも元気で、世はすべてこともなしのようなのですが...そのわりに、ソフィーの手紙には、そこはかとない不幸の響きというか、いやな雰囲気があるようにジャックは感じます。ソフィーには手紙に日付を入れるのを忘れる悪い癖があるのと、ネガティブなことをはっきり書かない性格なのとで、どうも原因がよくわからないのですが...

「兄弟、ぼくは今日は、ついに念願の提督旗を揚げたのと、レイトン卿と話したり他の初対面の人々と会ったせいでちょっとぼーっとしているから、この手紙が何のことやらわからないのだけど...」ジャックはスティーブンに聞きました。「どうやら仲がよくないらしいってことしかわからないのだけど。君の手紙には、何か書いてある?」

スティーブンのところには、ソフィーと一緒に住んでいるクリスティーンの手紙が来ていて、クリスティーンの手紙にはばっちり日付が入っていて、事実の観察ぶりもずっと具体的なようです。なにしろ科学者ですからね。

つまり問題は、オーブリー家の双子と、スティーブンの娘のブリジッドの仲が良くないことらしいのですが...

2009/10/6  23:59

オーブリー&マチュリン「21」(その10)  パトリック・オブライアン

ディナーの翌日、いよいよ南アフリカ艦隊がブエノス・アイレスに到着しました。

「到着した」と言っても、マストヘッドの見張りが水平線の彼方に姿を確認してから実際に到着するまでに1日ぐらいかかるので、その間にサプライズ号のみんなは、普段でも整理整頓がゆきとどいていてキレイな船をさらに磨きたてたり、普段はあんまり綺麗ではない自分の服装や髪をできる限り整えたりに余念がありません。提督の検査もあるし、何より、英国海軍の他の艦に「だらしない艦だ」と馬鹿にされるのだけは耐えられませんからね。

ここで誰より気をもんでいるのは、キリックでした。キリックの仕事は艦や自分ではなく、ジャックを美しくすること...いや、彼の軍服を美しく保つことです。なのに、この大事な時に、ジャックの少将の軍服(少将の軍服は艦隊司令官のものと同じで、ジャックは艦隊司令官をやったことがあるので持っている)が、思わしい状態ではないことに気づいたからです。

何しろこの軍服は、世界中のさまざまな環境をくぐりぬけ、「マレーシアのシロアリからニュー・サウス・ウェールズ(オーストラリア)の恥知らずなウォンバット、ホーン岬の南からアルゼンチンの荒涼たる原野まで、さまざまな害獣にかじられ、フンをされてきた」ので、昨夜キリックが必死でブラシをかけまくった結果、上等のウールの布がすっかり擦り切れてみじめに薄くなってしまっていることが判明したのです。

すっかりしょげてしまっているキリックに哀れを感じたジャックは、「そんなことは全然かまわない」というふりをして(本当は彼も、軍服にはこだわる方なのですが)、古ぼけた少将の軍服にバース勲章のリボンをつけて、ちょうど到着した新しい指揮艦、サフォーク号に向かうのでした。

前任のシモンズ艦長から士官たちの紹介を受けた後、彼はミズンマストの側に立っている艇長に命令しました。「旗を揚げろ。」

少将(rear-admiral)の青い旗がミズンマストに掲げられ、勇壮にはためき始めると同時に、オーブリー少将の最初の礼砲、13発の礼砲の轟音がブエノス・アイレスの港に響き渡るのでした。

2009/10/4  20:59

イオニア海の美しい港  パトリック・オブライアン

オブライアンファンのnaneさんが、モンテネグロのコトルを訪れた時の写真をアップして下さいました。

http://twitter.com/nane55

http://twitpic.com/k3bx8

http://twitpic.com/k252d

コトルは、オーブリー&マチュリン8巻「封鎖艦、イオニア海へ」(The Ionian Mission)の後半の舞台となった印象的な街「クタリ」のモデルになった街と言われています。

http://www002.upp.so-net.ne.jp/kumiko-meru/im_frame.htm

ジャックが息を切らしながら坂を上った、街の上に聳える要塞まで砲を釣り上げるためにトム・プリングズが苦労して街中にロープを張っていた街です。街の住民に親しまれたプリングズが、その穏やかな優しい性格から「お嬢さん(乙女)」と呼ばれていたことも印象的ですね(笑)。

写真を拝見すると、オブライアン氏の描写通りの美しい港町です。立て込んだ家々に洗濯物のロープが張ってあるところなんて、まさにイメージぴったり。オブライアン氏も、ここを訪れたのでしょうか。

2009/9/27  23:24

オーブリー&マチュリン「21」(その9)  パトリック・オブライアン

今回から第二章に入ります。今回は短いです、すみません。

その後、ジャックと息子のサム神父は約束どおりサプライズ号の艦上で和気藹々とディナーを楽しんだのですが、その後、アルゼンチンの総督にも招かれて、豪華なディナーパーティに一緒に出席しました。

一緒にと言っても、もちろん主賓は父でなく息子の方、アルゼンチンへの教皇特使、神の代理人の代理人たるサミュエル・ムピュタ神父(正式には母の名前を使っているらしい)(「パンダ」は、たぶん母親が結婚した人の名前なんでしょう)の方で、主賓席に座っているサムに比べて、ジャックはだいぶん下座でした。(ジャックとしては、文句はないどころか、とても誇らしく嬉しいことでしょうけどね。)

サムに対するこの下へも置かぬ扱いは、もちろん教皇特使だからということもあるのですけど、それ以上に、ブエノスアイレスにくすぶっていた動乱のタネを、サムが影響力のある穏健派の人々と、彼らに雇われている黒人労働者たちを説得することで見事に抑えてくれたということもあります。

で、ジャックが帰り道、マストヘッドに命令するような大声で「すばらしいディナーだったなあ!(My God, That was a damned good dinner)」と叫ぶほど豪華なご馳走がふるまわれたようですが...その内容を読んで、私はちょっと「え?」となってしまいました。

メニューのひとつとして挙げられているのが、ラプラタ河で取れた新鮮なロブスター(ふむふむ、美味しそうだ)の、苦いチョコレートのソース添え(...はあ?)と、山で獲れた70匹もの最高級のモルモット(...え?)

ロブスターにチョコレートソースも「???」ですが、モルモット(guinea pig)とは...ペルーに行った時(16巻)でもモルモットを食べる話はありましたが、てっきり非常食なのかと思っていました。総督のディナーにも出るような料理だったとは。美味しいのかなあ?

だって、モルモットってこれですよ。

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ラブリー♪

画像検索していたら、料理された写真も見つけてしまいました。まあ、ちょっとアレな写真なので、あえて見たいという方だけどうぞ。
この下は写真のみです。



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