2010/1/24  20:25

オーブリー&マチュリン「21」(その22)  パトリック・オブライアン

ここでのクリスティーンの台詞、オブライアンさんの遺稿にあった手書きメモそのままに引用します。

'Stephen, my dear,I am afraid I must beg you to tell that man not to call unless he is invited. He is becoming quite a nuisance - a wonderfully confident nuisance. He spent a long time talking to me through all these flowers and telling me that when he had taken up his appointed position at the Cape and when he had married to [a] woman he had chosen, there would be virtually nobody in the colony to compete with him in wealth and influence. I have met with some fools in my life even some god-damned fools, and a good many of them; but I have never met with such a confident ass as Miller: I suppose he is completely blinded by his position, appointment and I dare say wealth, as well as gross stupidity. Stephen, please get me rid of him. He is making me ridiculous as well as himself.'

えー、で、これを...いつものように、これを読んで私の頭に響いたままのニュアンスで、率直に日本語に訳してみますと...
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2010/1/17  20:57

オーブリー&マチュリン「21」(その21)  パトリック・オブライアン

皆さま、先週NHK-BS2で放送された「マスター・アンド・コマンダー」はご覧になりました?久々にフルで見ましたが、やっぱり何度見てもいいな〜。

日本語版字幕が変わっていましたね。DVDやWOWOWの放送の時は、だいたい劇場版と同じ字幕なのに、NHK-BS放送時はたいがい違うのは、何か権利の問題でもあるんでしょうか?まあ、この映画の場合、今度のもしっかりした良い字幕だったと思いますけど。

主な相違としては、原作翻訳版や劇場用字幕では「海尉」と訳されているlieutenantが「准尉」となっていましたね。当時の英国海軍におけるlieutenantという階級を正確に表す日本語はないので、「海尉」というのは日本の海洋小説の翻訳家がオリジナルで作った言葉だそうです。なので、まあ、どちらが正しいということはないのですが。

それより、一番印象的だったのは「Choose the lesser of two weevil」のダジャレが新訳になっていたことですね。これは、原作では6巻2章に出てくるシャレです。

http://www002.upp.so-net.ne.jp/kumiko-meru/tfow_2.htm

これ、劇場版字幕では「強い敵は無視(虫)しろ」となっていましたが、今回はコクゾウムシを幼虫ということにして、「大きい敵には要注意(ヨウチュウイ)」...いろいろ考えるんだなあ、と笑ってしまったのですが。

もともとは、「Choose the lesser of two evil 小さい方の悪(よりマシな方)を選べ」のevil(悪)とweevil(コクゾウムシ)をひっかけたダジャレなのですが、映画では「海軍では、小さいコクゾウムシ(悪)を選ばなきゃならないってことは誰でも知っている」となっていて、それが後の、もっとシリアスな会話にもつながってくるので、ほんと、難しいんですよねここの訳は。

と、前置きを長くしているのは、今回の「21」紹介が短いためなんですが(笑)。

「ナポレオンに会った時の通訳のために、ドクター・マチュリンに旗艦に来てほしい」というレイトン提督の図々しいお願いを断るため、理由のひとつとして、ジャックは「サフォーク号には、ドクターが手術しなければならない重症のヘルニア患者がいる」と言います。まあ、これは本当のことなのですが。

レイトン提督は、スティーブンを旗艦に呼ぶのは諦めたようですが、その手術の話を聞いて、「もしそれが血がたくさん出るような大手術なら、ぜひ甥のミラー大尉を見学させてやってほしい、彼はそういう手術が大好きで、四肢切断手術などがあると見逃さない」と言います。

まあ、血なまぐさい手術に、怖がりながらも興味を示してしまうのは人間の常のようで、映画でもジョー・プライスの頭蓋手術には人だかりができてましたけどね。でも、手足を切断したりする手術をわざわざ見学するなんて。ミラーは、嫌な奴なだけじゃなくて、マジでキモい奴なんじゃないでしょうか。うーん。

さて、その後すぐ、南アフリカ艦隊はブエノス・アイレスから喜望峰に向けて出航になります。サフォーク号は、仕方なくミラー大尉を乗客として乗せて行くのですが、案の定、彼は毎日のようにクリスティーンを訪れてピケット(トランプのゲーム)だのバックギャモンだのに誘うのでした。

スティーブンが妨害できたらいいのですが、彼は仕事があるからなあ。艦に乗っている陸軍さんは、することもなくてヒマなのです。

南米からアフリカまでの航海は、途中でちょっと嵐に見舞われたりはしたもののまずは順調で、1ページ以内で済んでしまいました。大きな艦で双子も船酔いを克服したようで、船の用語をどんどん憶えて使うようになっていて、それはそれで迷惑がられているようです(笑)。

アフリカに到着してすぐ、スティーブンはドクター・ジェイコブと一緒に例のヘルニア患者の手術をすることにして、約束通りミラー大尉に知らせに行きます。ミラーは例によってクリスティーンを訪問しているところだったのですが、ヘルニアの手術はたいして血が出ないと聞くと、「ご親切に知らせてくれてありがとうございます。しかし、今回は遠慮します」と断るのでした。

彼がいなくなると、それまで明らかに嫌な顔をしていたクリスティーンは、スティーブンに言うのでした...「スティーブン、マイディア、実はお願いがあるのだけど...」

<拍手コメントお礼(1/15にコメント下さった方)>
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2010/1/10  23:47

オーブリー&マチュリン「21」(その20)  パトリック・オブライアン

皆さま、1月11日(月)午後9:00〜、NHK衛星第二で「マスター・アンド・コマンダー」の放映があります!

ファンの皆さまはDVDをお持ちかと思いますが、よろしかったらどうぞ。散々DVDでも繰り返し観た私としては、テレビ放映時は音質・画質や字幕が変わっているかどうかとかに注目したりするのですが...今回は字幕は変えないでほしいなあ。「マスター・アンド・コマンダー」の劇場公開版日本語字幕は非常に優秀ですから。

それと、ファンでない皆さま...つまり、別の目的でたまたまこのブログを読んでくださっている方々、この機会にぜひどうぞ!

と、宣伝したところで「21」。

図々しくも、伯父だか従兄だかの提督に頼み込んで、強引に(?)サフォーク号に乗り込むことになったミラー大尉。ジャックも上官の命令とあって逆らえないのですが...

ミラー大尉は満面の笑みで、「ミセス・ウッドも乗っていらっしゃるのですよね、私はシエラ・レオネの頃から彼女をすばらしい方だと思っていました。あなたが航海に出られている間にも、ウールコムをお訪ねしてお会いする光栄に浴しました」などとジャックにぺらぺら話しかけてきて、その馴れ馴れしい態度にジャックは内心ムッとしています。

甥が甥なら伯父も伯父(または従兄弟)、レイトン提督はスティーブンをつかまえて喜望峰への途中で補給に寄るセント・ヘレナ島で、ナポレオンに「どうやったらワーテルローで負けずに済んだのか」を説教してやりたいので、旗艦で一緒に来てフランス語の通訳をしてほしいと、さらに図々しいお願いをしています。

あ、ひょっとしたら、ミラー大尉はスティーブンとクリスティーンの関係に気付いていて、ライバルを厄介払いするために彼を旗艦に移してほしいと提督に頼んだのかな?

これまた上官の頼みなので断れない、かと思ったら、さすがはスティーブン、きっぱり断っています。「レイトン卿、あなたのフランス語は十分通じますよ。私は自艦の患者たちへの義務がありますので...」

レイトン提督は、ジャックに「君から命令してくれないか」などとプレッシャーをかけるのですが、ジャックは冗談めかしつつもきっぱりと、「提督であっても、医師に強制することはできません。これは戦時条例に書いてあります。それに、もし他の医者にできたとしても、マチュリンには無理ですよ。大型の熊10頭をもってしても、マチュリンの意志を変えさせることはできません。」

実はこのへんからタイプで打った原稿がなくなって、手書きのメモ書きのみになっているのですが、オブライアンさんはここでのジャックのセリフを、微妙に違うのを3バージョンぐらい書いています。言っていることは同じなのですが違うのは表現で、「熊を自分の吐瀉物から離すことはできても...(You may turn a bear from his vomit)」とか「大型の熊10頭をもってしても(ten bears of the largest size could not deter Maturin from what he thought)」とか言っています。

例によって「熊」が出てきていることからして、これはジャックのオリジナルことわざ(Aubrism)かと思われますが、元になっている諺がわかりません(汗)。turn from his vomitって...こんなキタナイ諺があるのかなあ。

今回はこのへんで。あと、引っ張っても2〜3回かな。





2009/12/20  20:22

オーブリー&マチュリン「21」(その19)  パトリック・オブライアン

あー、今回で、タイプによるスクリプトがある(ちゃんと活字で印刷されている)部分は終わりだ。あとは手書きのページが10ページ。たぶん、2回分ぐらい?いよいよ残り少なくなってきました。

砲撃訓練が終わったと思ったら、思い切り機嫌の悪いキリックがジャックの礼服を持って艦尾甲板に現れ、「まったく、こっちは15分も前から準備万端で待っているんですよ」と...いや、このパターンも最後かと思うと寂しいですね。

そう、ジャックとスティーブンは旗艦にディナーに呼ばれていたのでした。レイトン提督はなぜか上機嫌で、特にスティーブンをことのほか丁重に迎えました。(ドクター・マチュリンとウィリアム王子の関係を聞きつけているらしい。この頃には、ウィリアム王子の王位継承が濃厚になってきていたらしいので。)

提督のディナーには、当然、彼の従兄弟のミラー大尉も出席していて、提督は改めて二人にミラーを紹介しました。と言っても、二人ともミラーとは一応知り合いだったのですけどね。

スティーブンは彼を望遠鏡で見たとき「ヘンリー・ミラーだ」と言ってましたが、ここでは提督は彼を「ランドルフ・ミラー」と紹介しています。しかも、提督の従兄弟になったり甥になったりしているような。まあ、ほんと、何度も言いますが初稿なんで、このへんになるとそういう細かいことは気にしていられないのですが...まあ、一応突っ込んでおきます。

このディナーは艦上で、出席者は男ばかり8人で、陸上でやるような正式なものではないのですが、その描写を読むと、食べ物の量と、なによりワインの量がすごそうです。このディナーの場合、鰹にはサンセール、家鴨にはオー・ブリオン、ローストビーフにはバーガンディ、食事の終わりにポートワイン、プディングにコーヒーの後はブランデー。はあ、当時の海軍士官って、こんな食事をするかと思えば塩漬け肉とコクゾウムシのわいた乾パンで何カ月も過ごしたりするのだから、敵と戦って死ぬより先に心臓病か肝臓病にやられそうです。

あいにくここでは、バーガンディが「corked」の状態であったようです。つまり、保存状態(特にコルク栓)に何らかの問題があって変質してしまい、変な匂いと味になっているということのようですが...出席者はみんな、気がついていないか、気がついていないフリをしていることにスティーブンは驚いています。たぶん、陸での民間のディナーパーティでは考えられないことなんでしょう。海軍のこういうパーティでは、船乗りはあんまり贅沢は言わないのと、上官の出すものに文句をつけにくい、ということがあるのでしょうね。

でも、ジャックは文句は言わなかったけど「グラスを空けなかった」と書いてあって...ジャックは贅沢は言わないけど、味がわからないわけじゃないのです。

「上官には文句を言いにくい」と言えば、ジャックはレイトン卿に、「私の従兄弟」(ミラー大尉)を彼の任地のケープタウンまで乗せて行くように頼まれています。個人的なことなので「命令」という形ではないけれど、まあ命令と同じですな。

なんで旗艦で行かないのかと言うと、ジャックのサフォーク号は先遣隊として最初に南アフリカに向かうことになっていて、ミラー大尉は一刻も早く赴任したいので、というのがタテマエなんですが...まあ目当ては明らかに、サフォーク号に乗っているクリスティーン・ウッドでしょうね。ミラーがレイトン卿に頼み込んだのでしょう。

さて、どうするスティーブン?

2009/12/13  20:59

オーブリー&マチュリン「21」(その18)  パトリック・オブライアン

ジャックとスティーブンがそんな会話をしていると、旗艦に「オーブリー少将とドクター・マチュリンをディナーに招待する」という信号旗が揚がったので、ジャックはすぐに承諾の信号旗を返しました。

「スティーブン、明日、旗艦のディナーに行くことになったけど、かまわないかい?」「もちろんいいとも、マイディア...それに、提督からの招待では、ぼくごときがどう思おうが、関係ないのだろう?君もだけど。どちらにしても、いいかげん大人の男たちと会話したいと思っていたところだ。女の子たちのおしゃべりには...もちろん、愛してはいるが...カニだの、ヒトデだの、ただのゴミだのを拾って来ては『サー、ねえ、これ何だか教えて!』と、こればっかり聞かされていて...ジェイコブが早く帰ってくればいいのになあ。」

「それなら、砲撃訓練をしよう!どうせ、火薬が余っているし...砲撃訓練なら、子供たちをびっくり仰天させて、黙らせるのに十分じゃないかな。すぐに命令するよ。」

ジャックにとっては、何でも砲撃訓練をする理由になるのね(笑)。要するに、好きなのね。

そりゃ、子供たちは一時的にはびっくりして黙るでしょうけど、翌日にはもう「砲撃訓練がいかに凄かったか」ということをぺらぺらと喋り出すと思いますけど。

サフォーク号は、ジャックが赴任したばかりということで、ジャックのいつもの厳しい基準に見合うほどには砲撃が上達していませんが、もともと規律のいい艦なのと、サプライズ号のベテラン船乗りが何十人か加わったことで、かなりのレベルに達しています。

砲撃訓練を間近で見学したソフィーとクリスティーンと子供たちは、もちろん度肝を抜かれた様子。子供たちはもちろんですが、何度かフリゲートの砲撃訓練を見たことがあるソフィーも、戦列艦のスケールの違う轟音に驚いていました。それよりも彼女にとっては、自分の夫の指揮下にあるこの艦のものすごさ、この世界の凄まじさを改めてひしひしと感じて、ちょっと動揺しているようです。

クリスティーンは、アフリカの森を一人でウロウロするような人ですから、もちろん銃には慣れているのですが、こんなにでっかい砲が発射されるのを見るのはもちろん初めてで、ブリジッドの手をぎゅっと握りしめていました。

この二人は、まあ当然とはいえ、砲撃訓練はあまり好きでないようです。思い起こせば、クラリッサは15巻で砲撃訓練を見学した時、大喜びで興奮していましたね。ダイアナは6巻で砲撃訓練を経験していますが、残念ながら船酔いで伸びていたような。元気な時なら、好きなタイプだと思いますが...

ここで妙な方に話がそれますが(しかも「ハリー・ポッター」を知っている人じゃないとわからない話)、このシリーズに登場する4人の女性は、きれいに「寮」が分かれるなあ、とか考えたことがあります。つまり、ソフィー=ハッフルパフ、ダイアナ=グリフィンドール、クリスティーン=レイブンクロー、クラリッサ=スリザリンね。男性登場人物はといえば、主な人々はみんなグリフィンドールになっちゃうんですけど。(船乗り気質そのものがグリフィンドールだからね。)



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