「『Very Cool』(Verve)/Lee Konitz」
愛聴盤(JAZZ)
このアルバムを愛聴盤といってよいものやら...実はこのアルバム、高校生の頃に買ったのですが、当時の私にはどうしてもなじめなくて、四半世紀もの間お蔵入りになっていたものです...私が黒人ジャズ至上主義者になる原因となった記念すべきアルバムでもあります...
このアルバムのリーダーであるリー・コニッツは、盲目のピアノの鬼才、レニー・トリスターノの門下生ということになっております(共演者のドン・フェララ、ピーター・インド、サル・モスカも)。このトリスターノという人、アルバムを作成する際にピアノだけを先に録音しておいて、ピッチを変えて再生しながら他のパートをオーヴァー・ダビングしたりとか...まぁ当時としては先進的な手法で音作りをしていた人だそうです(本の受け売りです)。
ジャムセッションのように、メンバー同士のぶつかり合いによってのみ良いジャズが生まれると硬く信じていた(今でもそうですが)私は、トリスターノのような手法で作られたものは、理論先行型の頭でっかちジャズだと決めつけてしまっていたので、このアルバムもその類のものだろうと、見向きもしてませんでした。
現在、巷で流行っている曲なんかも、共演者の顔も見ることなく、各ミュージシャンがそれぞれ自分のパートだけ録ったら「お疲れさん」みたいな作り方をしているんだと思いますが、私はこのような、ミックスダウンまでどんな曲になるのか分からんような曲作りのやり方にはずっと疑問を持っております。
そんなんだったら、生身の人間がわざわざやらんでも、全部打ち込みで出来ちゃうでしょう?そんな手法で作ってるから、3年も経つとカラオケで歌うのもはばかられるようなダサダサの曲になってしまうんです。ジャズの名盤達が、何十年経っても輝きを失わずに聴き継がれる普遍性を保っていられるのは、そういう薄っぺらな作り方をしていないからだと私は確信しております。
話が横道にそれてしまういつもの悪い癖が出てしまいましたが、なぜ今さらこのアルバムを聴こうと思ったかというと、
piouhgdさんのブログでトリスターノのアルバムが紹介されており、割と好意的な内容だったので、40を過ぎればちょっとは感じ方も変わっているかもしれないと思い、聴く気になったという次第でございます。
実際に聴いてみての感想ですが...結論から申しますと...悪くないです。いや、むしろ気に入ってしまいました。。。
テーマのアンサンブル部分の「作り込まれている感」が、ちょっと好きになれませんが(この辺の響きが”クール・ジャズ”と言われる所以なのでしょうけど)、各メンバーのソロパートに入ってしまえば、決して”クール”ではありませんでした。特にコニッツのソロからはむしろ暖かさすら感じられましたね。。。気に入った!
特にB面(「Kary's Trance」、「Crazy She Calls Me」、「Billie's Bounce」)が良かったっす。
コニッツが好きな人にとっては、多分「Kary's Trance」あたりがベストトラックになるんだろうなと思います。私が聴いても「凄ぇ〜!」と感じるほどの入魂のソロが印象的でした。
「Crazy She Calls Me」もいいです。ドン・フェララ(tp)抜きのバラードですが、沁みました...この曲も暖かいです。。。
私のベストトラックは文句なしに「Billie's Bounce」、聴く前はパーカーの曲が入っていることに違和感を覚えましたが、これがまた良かったっす!
テーマ部分なんかパーカーそっくりに吹いております。今までコニッツとチャーリー・パーカーって、何の接点もないと思っていましたが、この曲でコニッツの見方が変わりましたね。
ソロパートに入ると、コニッツらしいプレイも随所に現れてはきますが、パーカーに対する深い尊敬と愛情の念がビンビン伝わってきて...鳥肌立ちましたわ...
メンバー全員がリラックスし切った感じで、楽しげにプレイしているのも◎です。バップだクールだの言っても、結局根っこは同じなんですね〜。素晴らしい演奏だと思います。
いやぁ〜、piouhgdさんのおかげでトリスターノ派の人達に対する見方がちょっと変わりましたね〜。今度は親分のアルバムでも聴いてみようかな...

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