今回紹介する作品は、ひょっとしたらスイングジャーナル誌のゴールドディスクになっているかもしれませんが、ちょっと地味な存在だと思われますので、敢えて取り上げます。
ジャケットデザインはあまりぱっとしませんが、このアルバムには、50年代ハードバップのいい所がぎっしり詰まっています。
アート・ファーマーもジジ・グライスも、お互いバリバリ吹きまくるタイプではなく、抑制の効いた、上品なプレイスタイルのため、緊張感溢れる、激しい演奏が好みの方には物足りないかもしれません。
ただ、二人のコンビネーションは絶妙で、まるでレギュラーグループの演奏を聴いているみたいに完成度が高いです。
曲はずべてジジ・グライスのオリジナルです。いい曲書きますねー。全ての曲が現場で即興的に出てくるリフみたいな曲ではなく、ちゃんと作られています。
きっと彼は高度な音楽教育を受けていると思います。プレイスタイルも上品なので、恐らく黒人社会の中では恵まれた家庭に育ったのではないでしょうか。
いずれにしても、曲を書くジャズミュージシャンの中では、彼の作曲能力はトップクラスでしょう。
このアルバムは、A/B面で別のセッションが収められていますが、ホレス・シルバーの参加しているA面の方が断然良いです(B面も悪くはありません)。
アート・ファーマーの作品の中に、『Modern Art』(United Artists、今はBlue Note?)という雰囲気の似た作品がありますが、こちらはあまり好きではありません。
アート・ファーマーのプレイは申し分ないのですが、共演のベニー・ゴルソンのテナーの(口の端から空気が漏れているような)吹き方がどうしても好きになれないのです。
作曲の才能ならジジ・グライスと互角かそれ以上だと思いますが...ゴルソンファンの方、すいません。
余談ですが、『Modern Art』のジャケットのアート・ファーマーの顔、恐くありません?この顔と実際のプレイとの間にかなりギャップがあると感じるのは私だけでしょうか?

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