モンクは初めてですね。
ジャズを聴き初めの頃に、『Brilliant Corners』を聴き、その特異な音、強烈な個性にぶっ飛びました。強烈なインパクトはあったのですが、彼の世界がどうしても理解できず、その後しばらくは彼のアルバムを敬遠していました。
彼の音楽を理解すると言うか、受け入れる事ができるようになったのは20代も半ばを過ぎた頃でしょうか...一旦、好きになってしまうと、あの特異な世界、不協和音の連続までもが妙に心地よく感じられるようになるから不思議です。
このアルバムは...面白い!「偉大なる失敗作」とも言われているように、普通ならお蔵入りするであろう失敗テイクが、このアルバムの売りにもなっています。
その問題の曲は、「Well, You Needn't」。
事件は、モンクのソロの終わり頃に起こります。この曲は1コーラス32小節で、モンクのソロは2コーラス(64小節)です。
ソロも終盤に差し掛かった所で、モンク先生は2小節ほど早く自分のパートが終わったものと勘違いします(自分の曲のコーラス割りを間違えるなんて...さすが超大物...)。
次にソロを取るコルトレーンがなかなか始めない(コルトレーンが正しい)ことに業を煮やしたモンク先生が「コルトレーン、コルトレーン!」と、出を促します。
「オ、オレが悪いんすか?」とばかりにコルトレーンのぐずぐずのソロが始まります(出るタイミングは正しい)。
ところが、間違いを犯した男がもう一人...アート・ブレイキー御大です。
モンク先生の声に驚いたのか、変なタイミングで得意のドラムロールを始めてしまったために、コルトレーンのソロとリズムがずれてしまいます(2拍遅れ)。
モンク先生もずれたブレイキーに合わせてしまったため、コルトレーンが浮いた形になってしまいます。
そこで困ったのがウィルバー・ウェア。リズムとサックスの板ばさみに合い、ひたすら同じ音を出し続けてその場をしのぐ作戦に出てしまいます。
この状態は、下っ端のコルトレーンが折れる形で、リズムに合わせることにより解決するのですが、一流ジャズメン達が慌てふためく所がすんごい面白い!
こんなドタバタ劇を演じながらも、曲としてはすごくレベル高いです。そこが「偉大なる失敗作」と言われる所以ですね。
あと、「Epistrophy」でコールマン・ホーキンス様が出を2回ほどとちる部分もあります(2回目は周りが間違っているような...)。
そういうアルバムですので、作品の完成度といった点では、『Brilliant Corners』に軍配が上がってしまいます。にもかかわらず、私は『Monk's Music』の方により深い愛着を感じてしまうのです。
モンク先生とドラムスとの相性の点では、ローチよりブレイキーの方がしっくりくると思います。
また、モンクワールドに引き込まれることなく堂々としたプレイを展開する大御所、コールマン・ホーキンスの参加も面白い人選です。モンクの方がかえって遠慮しているような所もあって、興味深いです。
まぁ、大御所ホーキンスには駆け出しの頃にさんざん世話になってますから、頭が上がらないのも無理ないでしょう...モンクも人の子...

0