ウイントン・ケリーもソニー・クラーク同様、日本で絶大な人気を誇るピアニストですね。
ただ、プレイスタイルは微妙に違います。クラークを漢字一文字で表現すると、「湿」、「陰」でしょうか?これに対してケリーは「乾」、「陽」と言えるかと思います(ちょっと、乱暴な分類ですね...実際には、こんなにはっきりとした違いはありません...)。
とにかく、あの独特の「コロコロ」したスイング感、絶妙なリズムへの乗り方...上手く表現できませんが、いわゆる「ケリー節」というやつですね。
あの「ケリー節」が聴きたいがために、ついつい彼のアルバムをレコード棚から引っ張り出してしまうのです。
彼は生粋のハード・バッパーです。しかし、そうであるがゆえに、マイルスの名盤『Kind of Blue』では、ビル・エヴァンスにおいしいとこ全部待っていかれたりして...
ケリーのプレイスタイルがモード手法とマッチしないのはわからないでもないですが...当時のマイルスバンドのピアニストはケリーですよ!
プロのピアニストとしては、耐えがたい屈辱だったと思います。
ちなみにマイルスは、私の敬愛するハンク・モブレイ様に対しても同じような仕打ちを行っています...
マイルスは、確かにジャズ界に偉大な足跡を残して来た凄い人です。偉大なミュージシャンであることは解るのですが、そういったドライな所、冷徹な所がどうしても好きになれませんね〜。
また脱線してしまいました...このアルバムは『Kind of Blue』の後に録音されていますが、マイルスから受けた仕打ちの影響は全く感じられません...さすがはプロ!
それどころか、とてつもなく出来のいい作品に仕上がっています。ピアノトリオのアルバムは沢山ありますが、私のランキングではベスト5以内には確実に入りますし、ウイントン・ケリーのアルバムの中でも最高の出来だと思っています。
全体を通して、余計な力が全く入っていない、実にリラックスした演奏が繰り広げられています。まさにタイトル通り...
真夜中、クラブでのライブが終わり、客の居なくなったステージで、気心の知れた者同士で内輪のジャムセッションを演っている...そんな感じです。
そんな雰囲気のアルバムですが、そこは一流のプロ揃い、決してルーズで手抜きの演奏にはなっていませんのでご心配なく。「ケリー節」も十分に堪能できます。
フィリー・ジョー、チェンバースのサポートも完璧!文句無し!まさに痒い所に手が届く...って感じです。
このアルバムは、場所は忘れましたがジャズ専門店ではない普通の中古レコード屋で手に入れました。
500円位だったと思いますが、何とこれがオリジナル盤!!びっくりしました。
まぁ、ブルーノート盤(特に1500番台)のオリジナル盤と比べれば大した物ではないのかもしれませんが...しかし、500円でオリジナル盤を売るなんて...
今はCDの時代ですから、国内盤とか輸入盤とかあまりこだわる人はいないと思います。
しかし、LP時代には、音が悪かろうが針飛びしようが、オリジナル盤は偉かったのです...

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