今回の主役、ハロルド・ヴィックは、R&Bバンドを振り出しとして、ジャック・マクダフらとプレスティッジに何枚かアルバムを残したりもしているいわゆるコテコテ系のテナー奏者です。
そんな彼がブルーノートに残した唯一のリーダ作が本作です。貴重な一枚です。
貴重な一枚ではありますが、このアルバムのヴィック先生にプレスティッジでのノリを期待して聞いてしまうと、ちょっと物足りない感じはします...
メンバ構成にもちょっと疑問が...ジョン・パットン、グラント・グリーン、ベン・ディクソンらについては、なんの異論もございません。むしろベストな人選と言ってもいいでしょう(ギターはジョージ・ベンソンの方がいいかも...)。
問題はブルー・ミッチェルです。別に彼のことが嫌いなわけではありません。むしろ好きなトランペッターです。
好きではありますが、このセッションにはいらないかな...?
ミッチェルのプレイ内容は悪くないです。元々、ジャズの本流というよりは、こっち寄りの人ですから...
ただ、オルガンと相性のいい楽器は、なんと言ってもテナーとギターですし、このアルバムではハロルド・ヴィックを聴きたいので、トランペット抜きの4人編成にして欲しかった...
アルバムの全6曲中、5曲がヴィックの作品です。結構いい曲ばかりなので、彼がただのR&Bテナー奏者ではなく、高い作曲能力も持ち合わせている人であることは伺えます。。。が、A面2曲目の「Trimmed in Blue」、3曲目の「Laura」などで、普通のジャズっぽく演奏している部分が少々不満かな...
才能溢れる人材がひしめき合っているテナー界で、特に卓越したテクニックを持っているわけでもないヴィックが、ストレートなジャズ演っても勝負になんないでしょう...持ち味であるアーシーでソウルフルな部分を思いっきり強調した方がいいんじゃないのかな〜と思うんですけどね...
一番好きな曲は、B面3曲目の「Steppin' Out」。シャッフル・リズムに乗ったノリノリブルースです。やっぱりヴィック先生にはこういう路線で行ってもらわないと...
A面1曲目の「Our Miss Brocks」もいい曲です。グラント・グリーンも自らのアルバム、『Reaching Out』(Black Lion) で取り上げています。
このような、ミュージシャンが作った曲って、作曲した本人の演奏が一番良いパターンが多いように思いますが、この「Our Miss Brocks」の出来は、グリーンのバージョンの方が上ですね...音は悪いけど...
文句ばかり書いてしまいましたが、あくまでもヴィックのプレスティッジでのプレイを期待して聴いた場合に感じる不満点を挙げただけです...
ブルーノートのオルガンジャズのアルバムの中では、上位にランクされるべき良いアルバムだと思います。

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