フレディ・ハバートって、その実力の割りに人気が今一なトランペッターだと思います。
その原因は色々あると思いますが、後年、フュージョンっぽい路線に手を染めてしまったのが大きな理由の一つでしょうね...
あれで純粋なジャズ・ファンからひんしゅくを浴びたのは間違いないでしょう...
あとは、まだ生きているというのも原因の一つかもしれません。ブラウニーにしてもリー・モーガンにしても、先輩達はかなりドラマティックな最期を遂げております...
「ぱっと咲いて、さっと散る」みたいな生き様は、桜をこよなく愛する日本人のセンチメンタリズムをかきたてずにはいられません...
ハバードも、若いうちに先輩達のような最後を迎えていたら、きっと現在よりはずっと高い評価を得ていたのではないでしょうか(かなり意地悪な考え方です...)?
非業の死を遂げた一流ミュージシャンに対して、世間は「もう10年生きていればジャズの歴史が変わったかも...」みたいな賛辞を送ったりして、彼らを必要以上に高い所に持ち上げているような気がします...
ブラウニーがもし、あの自動車事故に遭わなかったら、本当にジャズの歴史が変わっていたでのしょうか...?私はそうは思っていません。
彼は確かに超一流のトランペッターです。超一流ではありますが、マイルスやコルトレーンみたいにハード・バップに限界を感じて、何か新しい道を模索したり、悩んだりするようなタイプの人には思えません...自分の納得できるプレイが出来ればそれで満足してしまうタイプの人に見えるんですけどねぇ...
もしブラウニーが生きていたら、彼のすばらしいアルバムが、何枚か世に出ることになったとは思いますが、彼に仕事が来るということは、キャラのかぶるリー・モーガンやハバート、ひょっとするとドナルド・バードらの仕事が相対的に減ることになりますので、今私達が聴いている「第二のブラウニー」達のご機嫌なアルバムがリリースされないことになっていたたかもしれませんよ...
サッカーの代表監督に例えるならば、ブラウニーはジーコ型、マイルスはオシム型といった所でしょうか...自分でも何を書いているのか良くわからなくなってきました...
脱線しすぎて、アルバムの紹介を全然してませんね...このアルバムは、ハバートのデビューから2枚目の作品です(デビューアルバム(『Open Sesame』)がいきなりリーダ作というのも、リー・モーガンとかぶりますね)。
まぁ、騙されたと思って聴いてみてください。ハード・バップが好きな人ならきっと満足できる内容に仕上がっていますから...
ハバートの生きの良い、突き抜けるようなハイ・ノートに痺れます。ハバートとフロントを担当するハンク・モブレイも頑張ってます。
ブルーノートでは、新人のアルバムには必ずベテランをさりげなく配置するケースが多いですが、このアルバムではモブレイがお目付け役を仰せつかっているようです。
A面1曲目の「Asiatic Raes」、3曲目「Karioka」と、ちょっとタイプの違う先輩トランペッター、ケニー・ドーハムの曲を使っているのが面白いですね〜
「Asiatic Raes」は、ドーハムの人気盤『Quiet Kenny』の「Lotus Blossom」(蓮の花)と同じ曲です。ドーハムバージョンとは違い、元気の良い曲に仕上がっております。個人的にはハバートバージョンの方が気に入っております。
A面2曲目の「The Changing Scene」、B面1曲目の「A Peck a Sec」がお目付け役モブレイの曲です。いかにもモブレイらしい佳曲だと思います。演奏の方も◎です。ブルーノートの典型的なハード・バップが楽しめます。
「Karioka」には、やや新主流派的な香りがしますが、全員の熱気がビンビン伝わってきますので、良しとしましょう。
ハバートがカミさんに捧げた「Blues for Brenda」も、ブルース好きの私には響きますね〜
やっぱり、1曲くらいはブルースを入れておいてもらわないと...
全体的に、非常にレベルの高いハード・バップの作品に仕上がっていますが、これには前作同様、マッコイ・タイナーの参加が大きく貢献していると思います。
特に奇をてらったプレイをしている訳ではありませんが、彼の演奏を聴いていただくと、このピアニストがただものではないことがお分かり頂けると思います。
あと、「I Wished I Knew」のモブレイのソロも沁みます...このアルバムの聴き所の一つと言えるでしょう。
アルバムと関係ない所で、随分と長くなってしまいましたが、ハード・バップ好きの方には是非聴いていただきたい作品です。

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