ジョン・ジェンキンスといえば、マクリーンと熱いバトルを繰り広げた『Alto Madness』で有名ですが、自らのリーダ作は驚くほど少なく(3枚?)、ワン・ホーンで入れたアルバムはこれしかありません。
ジェンキンスも、前に紹介したルイ・スミス同様、実力の割りにレコーディングの機会に恵まれないまま、ジャズ・シーンから姿を消してしまった、もったいないアルト奏者です...
このアルバムは、もうちょっと脚光を浴びてもいい、素晴らしい作品だと思います...A面1曲目の「From This Moment On」...イケてます...コール・ポーター作曲の、いわゆるスタンダードですが、見事にハード・バップの曲に料理されております。
「私の選ぶ名演100選(ブルーノート編)」には必ず入ってくるナンバーですね...ジェンキンスのみならず、ブルーノートレーベルを代表する名演だと思っております。
共演者もいいんですわ。ケニー・バレル、ソニー・クラーク、ポール・チェンバース、ダニー・リッチモンド...全員、最高のプレイを惜しみなく聴かせてくれます(ダニー・リッチモンドは、いつもより少し控えめかもしれません...)。
ジェンキンスは曲も2曲提供しております(A面2曲目の「Motif」、B面1曲目の「Sharon」)。特に「Sharon」などは、非常に親しみやすいテーマを持った良い曲だと思います(「Motif」は、あまり凝っていない普通のブルースですけど)。
「From This Moment On」の他には、B面ラストの「Blues for Two」が非常に気に入っております。バレル作のブルースです。ジェンキンスの渋いブルース・プレイも聴き所ではありますが、この曲の主役はなんと言ってもバレルでしょう...上手い!上手すぎる!!
バレルのブルースの上手さには定評があるところですが、この曲のソロは凄い!彼の代表的な名演と言っても過言ではないでしょう...このソロを聴くためだけでも、このアルバムを買う価値があると思います。
チェンバースも、スタジオに弓を忘れて来たのかと思わせるほどピチカートばかり使っておりましたが、バレルの熱演に触発されたのか、この曲でのみアルコのソロを炸裂させております...
ソニー・クラークのシングル・ノートも言うことありません。彼のベスト・プレイと言ってもいいほどの好調ぶりでございます。
これだけ全員が好調なアルバムはそうそうあるものではありません。レコーディング後の打ち上げも、さぞや盛り上がったことでしょう...
こんな会心の1枚を残しながら、程なくジャズ・シーンから姿を消してしまったジェンキンスの不遇を思うにつけ、「日本のミュージシャン達よ、もっと頑張ってくれ!」と言わずにはいられない今日、この頃です...

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