このアルバムは、スタンリー・タレンタインのブルーノートにおける初リーダー作『Look Out』のほぼ1ヶ月後の録音で、メンバーも『Look Out』のメンツにトミー・タレンタインが加わっただけなのですが、こちらの方が圧倒的に黒いです...ヤバい黒さに満ちております...私の大好きな世界です。
このどうしようもない黒さは、いきなりA面1曲目の「Wadin'」から炸裂します。『Us Three』でもやっているパーラン作のブルースです。
ジョージ・タッカーの凄みのあるイントロから、パーランのテーマに移行する部分は『Us Three』と似ていますが、このアルバムの方が、タレンタイン兄弟の参加によりより一層黒さが増しております。
それにしてもスタンリー兄さんのソロの黒さときたら...ヤバいです...やっぱ、こういう吹き方をしてくれないと...
このソロを聴いていると、何で『Look Out』ではあんなにあっさりしてたんだろう?と不思議になってきます。さすがのスタンリー兄さんも、初リーダーで緊張してたんでしょうかね...
2曲目は「Up in Cynthia's Room」、『Movin' and Groovin'』でもやっているこれまたパーランのオリジナルです。パーランの娘さんに捧げた曲だそうで、なるほど明るい曲想です。パーラン、タレンタインのダークな部分を聴きたい私には少々、物足りない感じがする曲です...
3曲目は「Borderline」、スタンリー兄さんの曲です。AABA形式で34小節のちょっと変わった曲です(Aが8小節、Bが10小節)。わざわざこんな構成にするまでもないような曲ですが、こういう曲も書けるんだということを世間に知らしめるために作った曲なのでしょう...
さすがに自分の曲だけあって、スタンリー兄さんのソロが一番キレてます。兄さんの独壇場といった感じの曲です。
B面1曲目は「Rastus」、トミー君の曲です。この曲も凝ってます...ブルースっぽい曲なんですが、これまたAABA形式で今度は44小節(Aが12小節、Bが8小節)の変な曲です。途中で転調してたりして、凝りに凝ってます...まるで兄弟で作曲能力を競い合っているかのようです...
まぁ、我々はそんな難しいことは考えずに純粋に演奏を楽しみましょう。いい曲なので...
2曲目は「Oh So Blue」、レオン・ミッチェルとかいう人の書いたブルースです。この曲がこのアルバムのベスト・トラックだと思います。スローなテンポが堪らんです。トミー君のミュート・トランペットとスタンリー兄さんの絡みが渋いっす。パーランも◎。「turuの選ぶブルーノート名演100選」に文句なしにエントリーです。
3曲目がタイトルチューンの「Speakin' My Piece」、ラストを飾るにふさわしい明るい曲です。悪くないっす。それまで割とおとなしくしていたタッカーさんのソロが聴けます。
いや〜、こんなに各メンバーの息がぴったり合った演奏は、聴いているだけで気持ち良いですね〜。まさにプロの仕事!って感じです。お勧めのアルバムです。

0