今回は、CTI時代のスタンリー・タレンタインのアルバムの中で、『Sugar』の次に気に入っているやつ行ってみましょう。
まずはメンバー紹介から...タレンタインさんと双頭リーダー的な存在としてミルト・ジャクソン、このアルバムの目玉です。ピアノ(ほとんどエレピばかり弾いています)がボブ・ジェームス、ギターのコーネル・デュプリー、ベースがロン・カーター(『Sugar』にも参加してます)、ドラムスがビリー・コブハムとなっております。72年の録音です...私の持っているアルバムの中では圧倒的に新しい部類に入ります...
このアルバムの魅力は、タレンタインのいつものように黒〜いテナーもさることながら、何と言ってもバグスさんのプレイに尽きると思います。前に『Bags Meets Wes』でも書きましたが、私はMJQのバグスさんよりピンのバグスさんの方が大好きでございます。
このアルバムのバグスさんも、タレンタインさんのプレイに触発されまくったのか、真っ黒なプレイを思いっ切り聴かせてくれます。彼のアルバムは、MJQのものも含め色々聴いてきましたが、この『Cherry』で聴かせてくれるバグスさんのプレイが一番好きです(異論もあるかとは思いますが...)。個人的には彼のベストなプレイが聴けるアルバムだと思っております。
お気に入りの曲は、まずA面1曲目の「Speedball」、リー・モーガン作のブルースですが、タイトル通り、直球勝負の分かり易〜い仕上がりとなっております。なぁ〜んも難しいこと考えずに楽しめる曲でございます。
B面1曲目の「Sister Sanctified」も大変気に入っております。8ビートのいわゆるジャズ・ロックでございます。ジャズの範疇を超えてしまっているような気もしますが、これも理屈抜きに楽しめる曲なので、これはこれでよろしいのではないかと思います。
主役のタレンタインさんについては、いつものように私の期待通りのプレイを聴かせてくれております。なんの文句もございません。
ボブ・ジェームスさんですが、A面2曲目の「I Remember You」以外はエレクトリック・ピアノばかり弾いております。上手いのですが、私はアコースティックの方が好きです...
コーネル・デュプリーさんは、若手のせいかあまりソロを取らせてもらっていません...が、ツボを抑えた的確なバッキングから想像するに、彼がかなりの実力を持ったギタリストであることは間違いないでしょう(彼のことはよく知りません...)。「The Revs」や「Sister Sanctified」でやっと取らせてもらっているソロを聴いた感じだと、グラント・グリーンとジョージ・ベンソンを足して2で割ったような感じのプレイスタイルの人です。ジャンゴ・ラインハルトやチャーリー・クリスチャンの影響をモロに受けてきた従来のギタリスト達とはちょっと違う匂いがします...嫌いじゃないです。
私にとってのバグスさんのベスト・プレイが聴けるといった点で、このアルバムは貴重なアルバムなのですが、不満なところもあります...それば、ドラムスとベースの音...特にバスドラの音がなじめません...これはミュージシャンのせいではなく録音方法の問題です。
マイクの性能アップ、録音技術の進歩によりこのような聴こえ方になっているのかもしれませんが、50〜60年代のブルーノート・リバーサイド等のベース・ドラムスの音が大好きな私には、全然気持ちよく聴こえてきません...この傾向は、最近リリースされるアルバムでもよく感じることで、その辺も私が新しめのアルバムを敬遠する大きな原因の一つとなっております...

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