パウエルさんが凄いっす!!
このアルバムは、スティットさん名義になっておりますが、パウエルさんの絶好調ぶりが印象に残る作品でございます。
また、このアルバムは3つのセッションから出来上がっておりまして、タイトルは『Sonny Stitt/Bud Powell/J.J. Johnson』となっておりますが、パウエルさんとジョンソンさんは共演しておりません(以下参照)。ちなみに、ジョンソンさんとのセッションがスティットさんのテナーによる初吹き込みのような気が...
Session1
Rec. Oct. 17, 1949.
Sonny Stitt(ts),Jay Jay Johnson(tb),John Lewis(p),Nelson Boyd(b),Max Roach(ds)
Session2
Rec. Dec. 11, 1949.
Sonny Stitt(ts),Bud Powell(p),Curly Russell(b),Max Roach(ds)
Session3
Rec. Jan. 26, 1950.
Sonny Stitt(ts),Bud Powell(p),Curly Russell(b),Max Roach(ds)
私が大好きなのは、もちろんパウエルさん参加の方。。。何も言うことはございません。スティットさん、パウエルさん共に一歩も引かないカチンコ勝負がたまりません。。。若干、パウエルさんの方に分があるかな。。。
全編に渡り、なんとも言えない緊張感がみなぎっておりますが、同じ緊張感でも『The Amazing Bud Powell, Vol.1、Vol.2』で感じるものとはちょっと違います。。。
『The Amazing 〜』の場合、ファッツ・ナヴァロさんとの確執が結構作用しているように思われますが、こちらは純粋に音楽的なぶつかり合いですので、緊張感漂う中にも、スティットさんもパウエルさん共にこのセッションを心から楽しんでいる様子が伝わって来て、2人の名人芸を純粋に楽しませてもらうことができます。。。
どの曲も素晴らしい出来ですが、「Fine and Dandy」(take 1)が結構気に入っております。スティットさんのソロの途中でパウエルさんが強引に割り込んできて、ソロを奪い取ってしまうところが堪らんです。。。このアルバムの聴き所でございます。
ソロを取られたスティットさんの顔を立てるためかどうかは分かりませんが、この曲のtake 2も収録されております。take 2ではパウエルさんも譜割り通りに弾いており、曲としてのまとまりは上ですが、take 1の方が断然面白いっす。
「Bud's Blues」のパウエルさんもいいっす。ちょっと当時のモンクさんっぽいです。スティットさんもブルースプレイの上手さにかけては定評がありますので安心して聴くことができますね。。。
全曲、素晴らしい演奏を聴かせてくれているパウエルさんですが、彼のプレスティッジへのレコーディングはこれっきりです...
これは有名な話ですが、このセッションを見に来ていたボブ・ワインストック(プレスティッジの社長)を、パウエルさんが「おい、そこの太っちょ、俺のサンドイッチ買って来い!」とパシリとして使おうとしたそうです。。。これを聞いたボブ君は激怒し、二度とパウエルさんを使わないことにしたそうです...
このエピソードは、パウエルさんの奇行ぶりを表すものとして書かれていることが多いように思われますが、私の見方はちょっと違います。。。器の小さい男ですわ。。。ボブ君は。。。
恐らく彼はミュージシャン達を上から目線で見ていたんじゃないでしょうか?「俺様がお前らを使ってやってるんだ!」みたいな...
不世出の天才ピアニストのプレイを録音するチャンスをこんなつまらんことでふいにしてしまうとは...馬鹿な男ですね...
常にミュージシャン達に敬意を払って接していたライオンさんとは人間としての出来が違いますね。。。
話が横道にそれてしまいました。。。ジョンソンさん参加のセッションについて何も触れていませんでしたね。。。非常に良い出来です。
ジョンソンさんのプレイもトロンボーンの第一人者としての名に恥じないすばらしいものなのですが、パウエルさんのセッションが凄すぎました...どうしても割を食ってしまっております。
もう少し曲を増やして別のアルバムとしてリリースした方が良かったかもしれません。。。

0