「『Tatum Group Masterpieces, Vol. 8』(Pablo)/Art Tatum」
愛聴盤(JAZZ)
実に味わい深いアルバムです。。。これは不世出の天才ピアニスト、アート・テイタムさんとテナーの巨匠、ベン・ウエブスターさんの共演盤になります。
56年11月の録音ですから、テイタムさんの死の2ヶ月前のレコーディング、遺作になる訳ですが、彼のプレイは絶好調。死が身近に迫っていることを微塵も感じさせません。。。最後まで凄いピアニストでした...
ソロやトリオのアルバムだと、どうしてもテイタムさんの超絶テクニックが前面に出すぎる傾向があって、好き嫌いが分かれるものが多いような気がしますが、このアルバムではウエブスターさんを立てたのか適度に控えめなプレイに終始されてますので、非常に聴きやすいアルバムに仕上がっていると思います(もちろんテイタムさんの超絶テクニックは十分に堪能できますが)。
テイタムさんのプレイ内容については、私などが敢えて語るまでもなくもの凄いので、もう一人の巨匠、ウエブスターさんに中心に書きたいと思います。
ウエブスターさんといえば、コールマン・ホーキンス直系の太く逞しいトーンを身上としたプレイヤーであります(私の一番好きなレスター・ヤングさんとはまったく逆のスタイルですね)。
このアルバムでは、スロー〜ミディアムテンポの有名な歌物ばかりが取り上げられておりますが、これは企画的に大成功だったと思います。これらの曲にぴたっとはまるんです。ウエブスターさんの音が。。。
どちらかと言えば豪快なプレイのイメージが強かった私には、最初にこのアルバムを聴いた時に、このはまりように少々驚かされた記憶があります。。。
このアルバムにおけるウエブスターさんのソロですが、どの曲も原曲の旋律を大きく崩すことなく、まさに飄々とした感じで吹いておられます。凝ったフレーズも斬新なアイデアも何もなしに...まさに直球勝負でございます。
甘〜い曲ばかりをこのようにストレートに吹いた場合、下手すると趣味の悪いムード歌謡みたいになってしまいがちですが、しっかりとジャズとして聴かせてくれる彼の力量は並大抵のものではありません。これが巨匠の技・貫禄なのだと思いますね〜。凄い人です。。。
テイタムさん名義のアルバムではありますが、このアルバムはウエブスターさんの代表作と言ってもいいかもしれませんね。。。沁みます。
スイング時代から活躍されている方々のアルバムですから、演奏のスタイルは少々古臭く聴こえるかもしれませんが、二人の巨匠の貫禄のプレイ、ジャズの真髄みたいなものはきっと伝わってくると思います。文句なしの名盤です!
このアルバムもお子ちゃまにはちょっと早いかもしれませんね。。。大人の皆さんにじっくり楽しんで頂きたい一枚です。
ジャケットも渋いっすよね。

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