言うまでもなく、エアロスミスは、芸歴30年を超えてもなおロック界の頂点に君臨する超大物バンドです。
彼らに匹敵するバンドと言えば、ストーンズは別格として、キッスくらいのではないでしょうか?
しかし、エアロスミスとキッスとの間には決定的な違いがあります。
両者とも、これだけ長い芸歴を誇るバンドですから、ファンの年齢層も上下30歳位の幅があると思われます(キッスのライブではもっと年齢の幅が大きかったような...)。
キッスのライブが終わり、武道館からぞろぞろ出てくる人たちを見ると、老いも若きもみんな満足し切った顔をしていました。
何故でしょう?キッスにはデビュー以来、バンドのカラーを貫き通しており(多少の紆余曲折はありますが...)、その一貫性が世代を超えた幅広いファン層の支持を集めている原因だと思います(進歩がない。という言い方もできるかもしれません...)。
エアロスミスはどうでしょうか?エアロスミスのファン層は、大きく2つのグループに分ける事が出来るかと思います。
1つは、1st『Aerosmith』から『Draw the Line』のいわゆる初期エアロスミスのみをこよなく愛するグループ(オヤジが中心か...)。
もう一つは、ゲフィンレーベルに移籍してからのゴージャス路線(『Permanent Vacation』位から後)の方が好きなグループ(若い人中心?)。
ジョー・ペリーらが脱退してから復帰するまでの、いわゆる低迷時代(良い曲もちらほらはありましたが)が大好きな人、全期間を通じて全て好きな人も中にはいらっしゃるかもしれませんが、多分、少数派だと思いますので今回は無視します。
2つのグループの間には、埋める事のできない溝があるように思えます。
前者のグループの人たちは概ね、ゲフィン移籍後のエアロスミスのアルバムには否定的ですし、後者の人たちは、初期の作品に対しても一定の評価を与えながらも、最近の作品の方に愛着を持っているようです。
初期が良いか?今のエアロが良いのか?...私にはあまり意味のない議論だと考えています。
同じバンド名で同じメンバーで活動していますが、初期のエアロスミスと今のエアロスミスは全く別のバンドであると理解すべきではないでしょうか?
どのようが経緯があったのかは知る由もありませんが、「Walk This Way」を出したあたりで、彼らは成功と引き換えに、初期の頃に目指していた(やろうとしていた)音楽を捨ててしまったのです。
私は、彼らの音楽の劇的な変化を、それまでの音楽が発展的に変化した結果だとは見ていません。
エアロスミスはデビュー当初、結構苦労しているバンドです。ストーンズのコピーバンドだと言われたり(スティーヴン・タイラーとミック・ジャガーって顔も似てません?脱線しますが、ジョー・ペリーは「ランボー」のスタローンに似ていると思うのですが、どうでしょう?)、1stの『Aerosmith』のチャートも150位にもいってないんじゃないでしょうか?
自分達の音楽が受け入れられなかったという挫折感がトラウマとなっている所に、ジョー・ペリーの脱退、その後の低迷期...さすがのスティーヴン・タイラーもあせらない訳がありません。
そんな状態の時にオファーが来ちゃたら...そりゃぁ飛びつきますわ。プロデューサー、会社の方針にも逆らう事なんてできませんよ...
あくまでもこれは私の想像です。想像ではありますが、全くの的外れな話ではないとも思っています。
ゲフィンレーベルから出したアルバムも確かに良い出来です。私も『Get a Grip』までは買って聴きました。
確かに良く出来たアルバムです。曲も良いし、ノリも、アレンジもすばらしいと思います...相当な時間と金をかけて仕上げているのもわかります...
でも、聞こえてくる音は私の好きだったエアロスミスの音ではないのです。
デビュー当初から、滑稽なくらいに愚直に己の道を信じ続けて活動しているマノウォーのアルバムを聴いた時に感じるような爽快感を得ることが出来ないのです。
映画、「アルマゲドン」のテーマ(タイトルも知りませんが)をテレビかなんかで聞いた時に、私は完全に今のエアロスミスと完全に決別する事を決めました。
長くなりすぎたのでこの辺で終わりにしますが、最後にエアロが好きな人たちに一言だけ。
『Draw the Line』までのエアロスミスと今のエアロスミスを比較して議論するのはもうやめましょう。両者は全く別のバンドなのですから...
『Draw the Line』
”ドロー・ザ・ライン”→”線を引け”...暗示的なタイトルだと思いませんか...?

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