Dear Friend,Gentle Heart
2005/10/4  二丁目の叔父  お気に入り

身の軽い人だった。
仕事の合間に、祖父母のいる茶の間に上がってきて、
ごろんと横になり、テレビを見たり、雑談をしたり・・・・
5,6分すると、「それっ」というような掛け声をかけて、
一気に起き上がり、部屋を出て行った。

子供好きで、飽きずによくじゃれて遊んでくれた。
プールでも、飛び込みの名手で、「エビ」をやって見せ、
色白の顔も胸も真っ赤にして、笑っていた。

おじさんちは、ノミの夫婦だ。

子持ちになってから、スキーで足を折ったことがあった。
子供心に呆れたものだ。

私は、口が達者で、生意気な子供だった。
屁理屈を言っても、いつもにこにこして、
「そうか」としか言わない。

宴会の十八番は、「のん気な父さん」「私のラバさん」
それから、「真室川音頭」以上3曲。

いつも夫婦連れ立って、食事だの花見だのに出歩いていた。
いつも同じ店しか行かず、同じものしか頼まない。

叔父さんの家で遊んでいると、寿司屋から電話がかかってくる。
「お父さん、いいカニが入りましたってよ。」おばさんが言う。
かっこいいな、おじさんは。

家族仲がよくて、夕飯時は野球やサッカー、水戸黄門なんかを
見て、全員で盛り上がる。
うちとはぜんぜん違うんだ。

ダボシャツにステテコ腹巻、若ハゲの頭に手ぬぐい鉢巻、
そしてうちわで、背中に扇風機を背負っている姿が、夏の定番。
そして、冬は毎晩、湯豆腐だ。

病院に見舞いに行くと、自宅にいるのと変わらず、
新聞を読み、いちいち細かく日々の様子をメモに取り、
テレビでサッカーを見て、批評しあっていた。

勇気を出して、
「これを使ってみてください」と、私が切り出したとき、
おじさんは、ベッドの上に背筋をしゃんと伸ばして座っており、
涼しげな眼でまっすぐに私を見つめていた。
あんなに緊張したことはない。
「見せてみな」と、受け取ってくれたけど、使ってはくれなかった。

おじさんは、特攻の生き残りだ。
死ぬことなんか、怖くない。
何人も仲間を見送ってきたんだ。
おじさんは、最後まで、立派な特攻隊だった。
おじさんを誇りに思います。
おじさん、さようなら




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