今から20年くらい前だったろうか、まだ僕が高校生くらいの頃、ボスニア・ヘルツェゴビナで『現代のロミオとジュリエット』が起きた事件を覚えている。当時の某クイズ番組が、その事件を紹介していた。
内戦で真っ二つにされたその国に住む一組のカップル。キリスト教徒の男とイスラム教徒の女。二人は平和な暮らしを求めて、首都サラエボを脱出しようと決意します。しかしサラエボを脱出するには通らねばならぬ一本の橋。橋の両側には両国の狙撃手が不審な人物を射殺する為に配置されています。男は橋を渡る前、女に言います。
「もし僕が撃たれても駆け寄ってきてはいけない!戻るんだ!君まで殺されてしまうから。」
二人がその橋を全力で駆け抜ける中、無情にも銃声が鳴り響きます。まず男が倒れます。女は男に駆け寄ります。決して戻りません。二発目の銃声。女が倒れます。男は即死でしたが女は薄れ行く意識の中で最後の力を振り絞りまだ暖かい恋人の遺体を抱いて息絶えるのでした。
「(クイズ番組司会者)さて、この内戦中に起こった悲劇の恋物語ですが、この後、男女の両家は小高い丘にこの若い二人を埋葬します。その際、この内戦の為に犠牲になった若い二人を想い、墓石をある形にしました。さて、その形とはどんな形でしょうか?」
(どんな形だ?うーん…)
「(回答者1)お二人は橋の上で亡くなった訳ですし、内戦が終わってまた国が一つになるよう祈りや、平和の架け橋という意味を込めて『橋の形の墓』を造った!」
(あぁ…なるほどね…ありかも。)
「(回答者2)ボスニア・ヘルツェゴビナがまた一つの平和な国になるように、『統一された国の形を型どった墓』にした!」
(二人が一つになる、って意味もあるしな…。それもアリだな…)
「(回答者3)二人仲良く一緒になってる彫刻を造ってそれを墓にした!」
(ベタだけど、ストレートではあるよな。親としてはそうしてしまうかもな…)
「(司会者)さて、答えが出揃ったようですね。では早速、答えを見て見ましょう!」
(どんな墓なんだろう…)
「愛し合った二人が眠るこの丘には両家の親により若い二人を偲んで墓が建てられてます。そのお墓の形とは…」
(うんうん…)
「ハート型でしたっ!!」
(まんまかいっっ!!)

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