不気味なエレベーターでの撮影も無事終わり、その日の撮影は以上。時刻は昼前の11時半。ロケ弁を頂いて僕は代々木にある、とある、洗車場に向かう。ここは僕のバイト先。このドラマの撮影の為、先日急遽、半ば強引にバイトを休ませてもらったのだ。思いの外、早く撮影が終わったので先日の罪滅ぼしにとびいりでバイトに参加。バイト仲間の清水君が、僕の姿をみつけて、大きな声で挨拶してくれる。清水君はひょろ長く、頼りない体格に、目尻の下がった笑い顔。イエスにも匹敵する程の温厚さと、心配になる程の純粋さを兼ね備えた、大分県の片田舎から上京してきた26才。会話の最後に、いつも「すいません」がはいるのが彼の口癖。なにも悪い事してないのに。バイトの中では一番の古株だが恐ろしく要領が悪い、けど一生懸命働く、でもやっぱり要領が悪い。その性格のせいか、彼は、とばっちりを自然と受けやすい。時折、うつむき加減に帰ってく彼の姿は気の毒にも感じる。しかし僕は週6日、毎日8時間びっしり不器用に働くこの男にえもいわれぬ、好感を感じる。この日夜7時迄働いた僕は、帰宅後、亡国のイージスをつまみ代わりに粗末な晩ご飯を終わらせると、朝早くからの撮影とバイトのせいか、ウトウト。ふと一通のメール着信音で目を覚ます。真夜中2時50分。誰だ?こんな時間に。メールを開封。「鎌倉さん、こんばんわ。バイト辞めました。すいません。お世話に、なった事、感謝してます。ありがとうございました。 シミズ 」

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