「とりあえずメシでも食おうよ。」真夜中の清水君からのメールに、そう返した次の日、バイト終わりで清水君に『てんや』で天丼をおごる。清水君は少しずつ打ち明け始めた。店長と反りが合わない事、そのストレスで体調がすぐれない事、音楽をやりに上京したのに、バイトで自分の時間が持てなくなった事、とりあえず田舎に一週間程帰って、今度はライブハウス等、音楽に近いところで好きなバイトをみつけよう、と思ってる事等。でもね、清水君。好きな事を、仕事にするのは大変な事だと思う。お金がからむと、バイトであっても楽しくやれるとは限らない。いや、逆に好きな事を仕事にすると、辛い事があっても何も言い訳できないよ。もしかすると、好きであった事が嫌いになる可能性だってある。ディズニーランドだって、好きだからって、そこで働くと、ディズニーランドが嫌いになっちゃうかもしれないよ。言ってて、はたと気付く。何、俺えらそうに説教してんだ?33にもなって役者として兆しも見えない、車も運転出来ない、酒も飲めない、好きな女の人にも愛されない、人が普通に出来る事も出来ない、出来損ないの俺が何を言えるというのか。子供の頃と何にも変われてない俺が何、大人ぶってんだ。次の日、いつもなら昼の1時に場内に鳴り響く、清水君の挨拶は聞こえない。そろそろバイトをあがろうとする頃、一通のメール。昼の2時50分。誰だ?こんな時間に。メールを開封。「辞めるの、考え直します。昨日は、ごちそうさまです。いろいろ、すいませんでした。 シミズ」 よく謝る男だ。

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