「お前と俺が同じ所で別々の芝居の稽古してるのって、ちょっとおもろいな。」
僕と座長は今、同じ建物内の違う部屋で互いに別々の芝居の稽古をしている事は前にも述べた。今日、稽古終わりで座長に会った。そして会うなり僕にそう言ったのだ。
駅までの帰り道、互いの近況報告。
「(座長)お前、マギーに挨拶したんだって!」
「ええ。」
「(座長)マギーが『舞台の鎌倉君と全然違うから誰だか分からなかった』って言ってたよ。」
「そうですか。そういや、マギーさんえらく怪しそうな顔してましたよ。」
「(座長)『舞台ではかっこよく(?)、観てて嫉妬するくらいだった(?)のに、普段はむさくるしく、もっさい感じで別人かと思った』とも言ってたよ。」
「あははは!でも・・どうなんですかね?それって役者として喜んでいい事なんですかね?」
「(座長)喜んでいい事だと思うよ。普段も舞台も同じなんですね、って言われるより、よっぽどいいよ。俺は、マギーが鎌倉の事をそう言ってたの、正直少し嬉しかったよ。」
マギーさんが僕の事をそう言ってくれたのも嬉しいが、それを座長も嬉しく感じてた事がたまらなく嬉しい。
歩いてるうちに新宿駅が近づいて来た。 「(座長)お前は無名塾なんていう、自分の実力なんてまだまだな事を気付かせてくれる、プロ集団にいるんだから、自分の芝居に常に危機感を持って上を目指していけよ。じゃあな。」
座長と駅で別れる。座長はエスカレーターを下ってく。
「(僕)はい・・・!」

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