高知に帰ると必ずお参りする神社がある。通称『おみろくさん』。その名のとうり、弥勒菩薩(みろくぼさつ)を祭った神社。ここにはおびただしい数のカエルの焼き物が奉納されている。
つまり、こういう事らしい。カエルには『イボガエル』というカエルがいるのだが、ここで祈願すると、イボをとってくれるご利益があり、そこから転じて体にできた腫れ物や、できもの、ガンなどの腫瘍の病気治療に効くらしいのだ。
10年程前、健吉さんの姉、僕からすれば叔母の喉にポリープができた時、健吉さんはここの噂を聞き付け、祈願。その検査の結果、良性である事が判明し、事なきを得て以来、健康好きの健吉さんはすっかりこの神社の崇拝者となる。最近では仕事運・交通安全・学業成就にもご利益ありと大きく拡大解釈し、必ず僕を連れていく。
ご利益があるのだろう。ご利益を受けた方々や、ご利益を求める方々がいつからか、カエルの焼き物やオモチャを置いてくようになったらしい。
境内にはカエルだけでなく、願い事や、願いが叶った感謝を述べた手紙も沢山貼ってある。できもの治療の祈願だけに中には切実な願いも少なくない。
その中の小さな一枚の貼り紙に目が止まる。
「姉の病気が良くなりますように。私の寿命を少しでも、どうか姉に分けてあげてください。」
比較的新しい紙のようだ。どこかの妹さんだか、弟さんが姉の為に、祈るような想いで書き、すがるような想いで貼ったのであろう。その文字に胸かきむしられる想いになる。
その姉弟(もしくは姉妹)はその後どうなったのであろうか。神様とて、全ての願いを聞いてやれる訳ではなかろう。
おみろくさん!さっきの僕の願い事はとりあえず保留で!僕の願い事はもうちょっと自分で頑張ってみるんで、そのきょうだいの願いをどうぞ優先してあげてくださいな。


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