土佐は山国と昨日書いたばかりですが、まぁ、1時間も行くと山また山。
「ちょっと運転してみるかえ?」
と健吉さん。運転は苦手だが、東京にいると、運転する機会もそうある訳でない。こんな時ぐらい田舎道を運転させてもらおう。健吉さんにずっと運転してもらう訳にもいくまい…。
道は比較的空いてる。まぁ、高知の山道だ。当然といやあ当然か…。しかし、随分変わったものだ。高知の道も。僕がいた頃の道とは比較にならないくらい大きく走りやすくなっている。とは言え、やはり運転は馴れないせいか、気をほぐす為に助手席にいる時より、話題をふりまこうとするのは僕。
「(僕)明日は映画でも行こうかな、と思うんやけど、なんか映画館も随分新しくなって場所も変わってしもうたみたいやね。」
「(健吉さん)そうよ。街中にあった映画館のほとんどは郊外に行ってしもうたわ。」
「(僕)変わらずにあるのは『あたご劇場』くらいやね。」
「(健吉さん)あそこは今、何を上映しゆん?」
「(僕)確か…『仁義なき闘い』シリーズを二本立てやったよ。」
「(健吉さん)『仁義なき闘い』か…」
前方を見て運転している僕に見える訳はないのだが、この瞬間、健吉さんの目は確実に光ったであろう。
「(健吉さん)しかし、あの映画は面白かったにゃあ。菅原文太も田中邦衛も小林旭もみんな上手かったわ!」
「(僕)キャラが、ひとつひとつ個性的で、確かに面白い作品やったねぇ。ヤクザの怖い部分だけやなく、人間くささも、コミカルに描いちょった。」
「(健吉さん)みんな広島弁も上手くて迫力あった。田中邦衛なんて、意気地ないくせにずる賢いヤクザの役でにゃあ…」
「(僕)広島ヤクザのくせに、神戸で強い勢力のある『明石組』に泣きついて盃もらおうとしたりね…」
「(健吉さん)おうおう!そうやったなぁ(笑っ)」
「(僕)しかし、高知の道も随分広うなったねぇ。」
「(健吉さん)……………」
「(僕)あ、でもあの『明石組』って『山口組』がモデルって本当なん?」
「(健吉さん)おう!そうよ!で、梅宮辰夫が演じてたんが、山口組の『ヤマケン』こと、山本健一がモデルよ!」
「(僕)そうなんだ!?へぇー!でも、高知の道も高速が出来たり、僕の持ってたイメージとは随分変わってきたなぁ。」
「(健吉さん)……………。」
「(僕)でも確か、梅宮辰夫ってあの、眉毛剃ってた役やろ?」
「(健吉さん)そうそうそう!本物のヤマケンもやっぱり眉を………」
え!?もしかして『仁義なき闘い』の話しか食いつかないつもり……?


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