旅初日。埼玉県は深谷(ふかや)という街に来ている。今日はセットを建て、本番同様の最終リハーサルで終わり。明日から本番初日があく。
裏方のみの仕事で旅につくのは初めてである。しかも他の劇団で。幸い、みなよく接してくれてとても感謝!役者の仕事がない間は外の舞台でプロの裏方としても経験をつんでいる川村君と違い、僕はズブの素人!裏方は場面が変わる際には真っ暗な舞台に出てセットチェンジをしなくてはならない。そのため必然的に服装は黒づくめである。おっといつも帽子を愛用している川村君、セットを建てこむ時はベージュだった帽子も本番前には黒のニット帽に変わってるではないか!流石ね!僕だってそれくらいは心得ているがな!長袖長ズボンの黒のツナギが僕にとってはユニフォーム!…あ…しまった…靴が…真っ白のランニングシューズだ…ヘタこいた…。という訳で僕の靴は全面、黒のガムテープでおおう事に。
無事リハーサルが終わり、ホテルに戻る。旅の始まりという事もあり、終演後は仲代さんが塾メンバーに夕食をごちそうしてくれる。
夕食後、仲代さんをホテル迄見送り、僕と川村君は夜食を買いにコンビニに行くのだが、夕食の席での川村君のキャラや、この前の『長州〜』での川村君の演じてた警察官の演技を見るにつけ、最近の君はテキトーお気楽キャラ路線を歩んでいるんではないか、と僕は彼を痛烈に批難する。
「最近の君はまるで植木等さんか高田純次さんを踏襲してるように思うがどうなのかね?さっきの夕食の席でも高田さんみたいにテーブルの下では靴はおろか、すでに靴下まで脱いでるんじゃないかとヒヤヒヤもんでしたよ!」
「そんな事ないですって!」
「いやいや、今にこんな風に道路の真ん中を『♪お〜れ〜はこの世で1番、無責任と言われた男ぉ〜♪』なんて歌い始めるんじゃないんですか?」
「それは鎌倉さんでしょう!?」
「昔はトヨエツ路線だったのに、何故いつから植木高田路線になったの!?ねぇ?」
議論は平行線のまま僕らはコンビニの中。
「…君が認めようが認めまいが、君はお笑い路線を歩んでます!」
「それは鎌倉さんです!」
「いいや!川村さんです!」
「鎌倉さん!」
「だから俺は違うって言っ…ちょっ…見ろよ……川村君!これ!君が好きだった奴じゃない!?ほら!はにゃ〜って奴!」
「うわっ!本当だ!鎌倉さん、このコーラにはゴンタ君ついてますよ!のっぽさんも!のっぽさん、出来いいなぁ。」
「え!?ゴンタ君よりのっぽさんの方が…?むしろこういう場合、ふつーゴンタ君の方が…」
「こっちにはタップ君まで!」


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