「川村さん、折角だからここに来たからにはその土地のおいしいものを食べにいきましょうよ!」
いつもコンビニかファミレスの毎日に僕はそう提案してみる。
「(川村君)何を言ってるんですか…。」
「へ…?」
「(川村君)いつからですか…。」
「へ?何が?」
「(川村君)いつからそんなに腑抜けになったんですか。」
「いや…いつから…て…?」
「(川村君)旅に出てその土地土地の美味しい店を探して、美味いものを食べ歩く、そんなストイックさのカケラもない事をいつからするようになったのかと聞いてるんです。」
「いや、でも…どこ行ってもマックや、ファミレスやらでは…」
「(川村君)その土地にはその土地なりのマックやファミレスがあるもんです。その土地その土地のマックやファミレスを食べ歩く。これこそが僕達のご当地グルメじゃなかったんですか!」
「はっ!!」
奈良には奈良なりのマック…。新潟には新潟なりのガスト…。苫小牧には苫小牧なりのロイヤルホスト…。埼玉には埼玉なりのバーミヤン…。姫路には姫路なりの松屋…。
そうか…。あんたは旅を通じてその事の大切さを俺に伝えたかったんだな。いつだって終演後、俺達の足はホテルの周りをファミレス求めてさまよってたっけ…。その土地その土地のチェーン店。常識を覆すグルメ感。
「(川村君)何笑ってるんです…?」
いや…お前…いつの間にそんなに成長したのか、と思ってさ。いつまでも子供だと思っていたお前から一本とられるとはな…。
胸の中から熱いものがこみあげてくる。それは首から顔へと徐々に上ってき、瞳から一粒こぼれた。
あれ…可笑しいな…笑ってるはずなのに…なんでだろ…。


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