「で…寝違えだろうと思って放っておいたところが、三日経っても治らないんで、ここに来た、という訳だな。」
先生は僕を治療椅子に招く。
18日昼前、僕は近所の整骨院にいる。首はまだ治らない。起き上がるのも辛いのだ。起き上がる際も一度横になってうつぶせになってからでないと起きられない。
椅子に座らされ肩をぐる…ぐる…。こんな時の『力抜いて…』は事の他、難しい。息を吐きながら先生の力に委ねるが、間接の苦しい領域に達すると勝手に抵抗が働く。
「筋肉がね…役に立たなくなっちゃってるんだよ。筋肉過労…。疲労じゃなくてもう…過労だな…。」
「最近…芝居の作業で稽古場で連泊する事が多くて…。適当な場所に布団敷いて枕もなかったんでジャンパー丸めて枕にしてたら…朝こんな状態になっちゃって…。」
「もう…ね…そんな事しても体がなんともないのは十代までだよ!」
二十代迄だよと言わずに十代までだよ、と言ってくれた先生の言葉に最低限の優しさを感じるのである。

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