「ういーん、ういー…ガシャういーん…ういー…」
今回の芝居の稽古場となっているとある地域センターの玄関口。入口自動ドアの側に喫煙用の灰皿が置いてある。感知センサーの設定が間違ってるのか、さっきからやたらと自動ドアが敏感に反応している。タバコの灰を灰皿に落とそうと立ち上がるだけで
「ういーん…がしゃ」
少し体を動かすだけで
「ういーん…がしゃ」
まるで編集されたテレビ番組の巻き戻し再生巻き戻し再生を見てるかのように
「ういーん、ガシャ…ガシャガシャ…ういー…」
さすがにうっとおしいものだ。その動きは例えば優柔不断なツッコミのようにも聞こえる。
《(自動ドア)入るんかい!?入らないん…はい…入るん…!?やっぱ入らないんかい!?…で結局入るんかいっ!!》
まるでほんの少しでも動いてはいけないかのような錯覚すら覚える。
地域センターの目の前は幼稚園である。園内からは叫びにも近いような園児達の元気な声が聞こえる。そんな園児達の元気な声に誘われてか老若男女を問わず通りかかった人達は園内の元気な子供達にしばし足を停めて見入っている。
幼稚園の外壁にはその幼稚園を卒業した園児達が描いたであろう自画像が沢山描かれており元来子供の描いた絵が好きな僕はたまらなく魅力的である。
「(僕)へぇ…平成17年度卒園生…か…。ゆいちゃん…あさとくん…きょうへいくん…」
《ういーん、ガシャ…》
「りえちゃんにちひろちゃん…しょうくん、しゅんくん…」
《ガシャガシャ…ういー…》
「えりちゃんにゆきちゃん…」
《ういーん…ういー…ガシャういーガシャ…》
「あきこちゃんにすすむくんに…」
《ガシャガシャ…ウイー…ガシャ…》
「ええーい!!うるさいわっ!!」


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